自然による注意資源の回復

「注意力」は有限の資源

 私たちの注意力や集中力は、体力と同様、限りがあることを示しているのが、「注意資源」という考え方です。集中してプレゼン資料を作成している時に、新入社員にパソコンの基本的な操作について聞かれたので、教えてあげていたら、取引先の部長から電話がかかってきて、慌ててパソコンの資料を探していると、作りかけのプレゼン資料を保存せずに閉じてしまった、という状況を考えてみてください。せっかくプレゼン資料の作成に全神経を集中させ、注意資源をそこに振り向けていたのに、注意は散漫になり、再び集中モードに戻るには、少し時間がかかることでしょう。これが注意資源を消耗したわかりやすい例です。この例で、プレゼン資料の作成に振り向けていた注意や、パソコンの資料を探していたときの注意、つまり、1つの方向にだけ向ける注意のことを、「方向性注意(Directed Attention)」といいます。

 仕事では、この方向性注意がとても重要になることは容易に想像がつくと思います。重要な会議で使うプレゼン資料で、細かい言い回しやビジネス計画の数値のチェックをするときは、この方向性注意が全開になっているはずです。しかし、冒頭で述べたように、私たちの注意資源は有限です。ずっと方向性注意を振り向けていると、あっという間に消耗してしまいます。せいぜい90分ほどが限界という研究結果もあります。では、注意資源を使い切ってしまったときはどうすればいいのでしょうか。

 

選択性注意と注意資源の回復

 米ミシガン大学の心理学者スティーブン・カプラン博士らは・・・

 

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【執筆者プロフィール】

板生 研一

WINフロンティア株式会社創業者&CEO / MBA&PhD(医学)/ SONY出身 / 東京成徳大学経営学部特任教授 / メンタル・マネジメント、クリエイティビティ・マネジメント、アントレプレナーシップの研究と実践 / 信頼できるエビデンス(海外学術研究等)に基づき発信 / noteで『起業家兼研究者が考える メンタル・マネジメント法』を連載中