呼吸とストレス対処法

人は強いストレスにさらされると、時として身体的な不調をきたすことがあります。

ひどい時には、めまい、冷や汗、動悸、血圧の乱高下、頭痛、吐き気などの自律神経失調症と言われる状態に陥ることもあります。

このようなストレスに対し古くからヨガや座禅、丹田呼吸などの呼吸方法が有効であると言われてきました。
これらの実践的な取り組みが効果的である科学的根拠が少しずつ解明されつつあります。

 

ストレスは如何に自律神経を侵すのか?

自律神経の働きは法則性があります。
必ず交感神経か副交感神経のいずれかが機能しています。

交感神経は身体が活動的な時、頑張らなくては行けない時などに作用し、興奮状態を作り出します。

一方で副交感神経は身体を休める時に作用し、食事や休憩、睡眠の時などに作用します。

このように相反する神経の作用が切り替わる形でどちらかが作用しています。

通常、私達は興奮と安静の適度なバランスのもとに健康が支えられています。

ストレスがかかる状態というのはその状況に対し、立ち向かうか逃げるかしなくてはいけないので交感神経が優位になり、身体は興奮状態になります。

この時、副腎にあるホルモン(カテコールアミン・コルチゾール)などのストレス耐性ホルモンも放出され、普段では出ないような集中力や力を発揮させます。

ストレス耐性ホルモンは糖やタンパク質、脂質を分解しストレスに対応するエネルギーも十分に供給されるため疲労も感じにくい状態になります。
いわゆる「火事場の馬鹿力」というものです。
しかし、この興奮状態は非常事態に対する反応なので、事が過ぎるとどっと疲れが出たり、体調を崩したりします。

このように交感神経による興奮状態が続くことで心身のバランスを崩すことがあります。

 

自律神経の機能状態を測定する

自律神経が正常に機能しているかどうかを測ることが出来ます。
心拍変動係数CVRR:Coefficient of Variation of R-R interval)という指標をここで紹介します。

健康な人の脈拍は規則正しく一定のリズムで拍動するものと考えられてきましたが、心電図をミリセカンド単位(1000分の1秒)で細かく見ていくと、厳密な規則的リズムではなく、若干早くなったり遅くなったりしていることが発見されました。

健康な人でも心拍の“ゆらぎ”があります。
このゆらぎが大きいか小さいかの値が心拍変動係数と言われるものです。

心拍変動係数は1分間の心拍の間隔の平均に対してどのくらいゆらぎが大きいかというものです。
ゆらぎが大きければ副交感神経が優位ということを意味し、ゆらぎが小さければ交感神経が優位じょうことを意味します。

具体例を上げると、交感神経が優位の場合、心拍数が増え、拍動の間隔が狭くなります。
その分ゆらぎも減るため、心拍変動係数も値が小さくなります。
副交感神経優位の場合にはその逆になります。

 

呼吸が心臓に与える影響は?

深い呼息は副交感神経を興奮させます。

呼息時には横隔膜が上に引き上げられストレッチ状態になります。
この伸ばされた刺激が副交感神経(迷走神経)を持続的に興奮させ、脳幹にある呼吸中枢を刺激します。

永田らの実験によれば20秒息を吐きつづける事によって優位に心拍変動係数が上昇したという結果が出ています。

つまり、深く長い呼吸によって、副交感神経の活動が優位になり心拍のゆらぎの幅が大きくなったということになります。

このことから呼吸をうまくコントロールすることで、自律神経の働きを調節できるという可能性が示されました。

 

長生きは長い息から

ストレスは身体を緊張させ呼吸を浅くさせます。
しかしこのようなサインに気づいたら、少し立ち止まり、深呼吸とともに心を沈め調子を整える必要があります。

一度ピラティスに通って呼吸法を練習するのもオススメです。

 

<ライター>

神保洋平(じんぼようへい)

1980年生まれ 山形市出身。H15~21 栃木県大田原市で回復期から生活期を支えるクリニックに勤務。 リハビリテーション部 主任を経て、 H19.2 認知運動療法士取得(マスターコース修了)。

H21~現在は、神奈川県の作業療法士養成校 作業療法学科にて専任教員を務めています。また、H27.3首都大学東京大学院 人間健康科学研究科 博士前期課程修了。現在 同大学院 人間健康科学研究科 博士後期課程 在学中。

趣味は楽器演奏(ギター、ドラム、ベース)、写真撮影、ドライブ、サイクリング。また、現在没頭していることは、質的研究(意味、価値観、同一性、自己論、ナラティブ、現象学)読書しながらの筋トレ。

好きな言葉は「真実の追求は、誰かが以前に信じていた全ての”真実”の疑いから始まる」(Byフリードリヒ.W.ニーチェ)。信念は「為せば成る」。
好きな音楽はWong Wing Tsan「夏の風車」。実は、以前某ワークショップで彼とご一緒させていただき、無理を承知でリクエストしたら快くOKを頂き、おまけにワーク中の演出としてサプライズ演奏!大感激でした。非常に思い出深い1曲です。とても奇策な方で、活躍されているにも関わらずとても謙虚、それでいて肩肘張らない柔らかい雰囲気が大好きです。

学会発表、講師活動、論文発表等多数。

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