人は自らの力でエネルギーを高めることができる 呼吸アドバイザー 椎名由紀さん Vol.4

現代はストレス社会と言われますが、適度なストレスはヒトの成長に欠かせません。日々「こころを整える」ためにどうすればいいのか、COCOLOLOマガジン編集部が様々な分野で活躍する人物からそのヒントを探る「こころトーク」。

呼吸アドバイザー椎名由紀さんへのインタビューの最終回は、私たちが日常で意識したい呼吸や姿勢のお話と、すっかり元気になった椎名さんが今、呼吸法に加えて夢中になっていることについてお話を伺います。

 

深い呼吸のために、まずは正しい姿勢から

編集部:いよいよインタビューも最終回です。『ZEN呼吸法』のポイントを教えて下さい。

椎名:深い呼吸をするためには、まず姿勢です。着物を着ていた頃の日本人は肚(はら)が座っていたのですが、洋服文化になってから日本人は肚を忘れてしまいました。

坐禅の姿勢は十何時間座っていても身体に負担がかからず疲れない理にかなったものなのです。
私はお伝えするときに、「太い切り株(仙骨を立てて肚に力が入った状態)の上に、(肋骨から上は)プリンがのっている」状態と喩えています。

 

編集部:まずは姿勢から、ですね。

椎名:そうです。前回お話した呼吸法の師と仰ぐ白隠は、禅僧ですが、3つの‘調える’「3調」を説いています。「調身」「調息」「調心」と言って、まず、最初に姿勢を調える「調身」がきます。

 

「吐く」から始める深い呼吸で、身体をゆるめる

編集部:ところで、みなさん正しい呼吸はすぐに出来るようになりますか?

椎名:いや~出来ない方が多いですよ。
まず、みなさん、呼吸というと「吸う」ことが大事だと思っていますね。呼吸でなく「吸呼」になっています。

そして、ストレス社会なので、どうしても力が入ってしまって上半身がガチガチです。みなさんゆるんだ状態がどういうものかわからなくなっています。さらに、スマホ、パソコンからは逃れられないので、胸が縮んで肩・首に力が入って、、、。これでは深い呼吸はできません。

 

編集部:正しい呼吸法とは?

椎名:まずは「吐く」です。吐いている時に筋肉は緩みますから。

 

 

田んぼで身体を動かして、こころが喜ぶのを実感

編集部:ご自身の呼吸法ですっかり健康になられた椎名さんですが、とっておきのリラックス法はありますか?

椎名:今は基本的に毎日心身を緩めて生きているので、リラックスっていうのがピンと来ないのですね・・・。言うならばずっとリラックスしています(笑)。

 

編集部:では、気持ちいい場所や時間はありますか?

椎名:実は、からだと対話するようになって一番変わったのは「食」です。それで、3年前から長野で田んぼを始めて、自然栽培でお米を作っています。「自然(じねん)塾」といって、通年で田植え、稲刈り、呼吸法を体験していただく講座も開講しています。

そうやって考えると、土に触れ、身体を動かして農作業をして汗をかいて不要な物を身体の外へ出す、そうやって田んぼで身体を動かしていると、こころとからだ全体が喜んでいる実感がします。

 

編集部:こころが喜ぶことをするっていいですよね。

椎名:今、うつ病で苦しんでいる方も大勢いらっしゃいますが、そういう人にも自然栽培の田んぼは向いているのではないかと思います。農薬や化学肥料を使わない栽培は人手もたくさん要りますからね。

こんな話をすると、「私にはそんなエネルギーないわ」と仰いますが、みなさん産まれたときは自分でエネルギーを作り出す力はあったし体温も高かったのです。だから大丈夫です。それに自然の中では体も自然とゆるみます。土の中に足をすっぽりうずめる水田はもっともゆるみやすい場だと思っています。

これからも、ひとりでも多くの方が呼吸で身体の使い方を変えて、リラックス&ピースフルなマインドで過ごせるようお手伝いができればいいなと思っています。

 


椎名 由紀 (しいな ゆき)
ZEN呼吸法呼吸アドバイザー / 体内対話 株式会社 代表

1975年生まれ。早大一文哲学科 卒業。第40代ミス東京第1位。
10代半ばより15年間続いた原因不明の不調を、江戸中期の 禅僧「白隠」の呼吸法で完全に克服。『ZEN呼吸法」』としてメソッド化。現在は、一般向けのレッスン、企業や団体の講演を多数行う他、代々 木studioを中心に、京都の禅寺など全国を飛び回る。湘南と信州の二地域居住、無農薬無肥料のお米を生徒たちと共に育てている。
http://www.zenkokyu.com/


編集:COCOLOLO ライフ magazine 編集部