自分自身の見方を広げる最適なルーティンの見つけ方とは? スポーツメンタルコーチ・鈴木颯人さん
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現代はストレス社会と言われますが、適度なストレスはヒトの成長に欠かせません。日々「こころを整える」ためにどうすればいいのか、COCOLOLOライフmagazine編集部が様々な分野で活躍する人物からそのヒントを探る「こころトーク」。
前回に続き、数々のアスリートのパフォーマンスをコーチングによって激変させてきた、スポーツメンタルコーチ・鈴木颯人さんにお話を伺いました。COCOLOLOライフmagazine編集部の板生研一(WINフロンティア㈱代表・医学博士)との対談形式で、自分自身の見方を広げる最適なルーティンの見つけ方について語って頂きます。
ルーティンワークの必要性について
編集部:ルーティンワークの必要性について教えてください。メンタルコーチの鈴木さんから見て「ルーティン」というのは重要なものなのでしょうか?
鈴木:そうですね。ルーティンは必要だと思います。それこそ御社のストレスの度合いを測るアプリCOCOLOLOを使いながら色々考えるのですが、交感神経優位なのか、副交感神経優位なのかで組み立て方が結構変わってきます。ルーティンが多過ぎるのもだめですね。ルーティンはゲン担ぎと同一化されやすくて、多くなり過ぎてうまくいかない方もいます。
編集部:いくつもルーティンを持たれる方がいらっしゃるのですね?
鈴木:僕の聞いた話ですと、ある選手はファンからいただいた手紙を試合前に全部読んでから試合に行くそうで、何百通もあるようです(笑)
編集部:それは大変ですね。増えていきますし(笑)
鈴木:他には、遠征先で仏壇のような置物を部屋にまずセッティングされるとか。
かなり神経質になる方もいらっしゃいます。
編集部:試合直前にやるものと、試合の何日も前からやっていくものなど、ルーティンにも色々種類がありそうですね。
鈴木:そうですね。例えば、このお守りをもっていれば大丈夫!と日頃持ち歩いているのは試合の何日も前からやっているルーティンだと思います。ホテルから会場までの移動時間・会場でアップしているとき・試合直前に気持ちを昂るため、と場面に分けて聞く音楽を変えて試合に臨むというのもルーティンになりますね。
編集部:なるほど。負けてしまったからこのルーティンは辞めようというような、試合結果によってルーティンを変えるということもあるのでしょうか?
鈴木:そうですね。ラグビー選手の五郎丸さんのルーティンが以前流行ったかと思いますが、今はほとんどルーティンをしないそうです。
ルーティンというのはそもそも、フランス語の「ルート」からきています。道しるべというような意味ですね。特定の結果を出すためのルートを作っているだけなのです。ですから、そのルートが特定の結果を生み出さなければ、正しいルートではないということになるわけですね。そして正しいルートではなければ、改善しなければならない、という考えにつながっているのはすごく感じます。
編集部:さきほど交感神経・副交感神経どちらが優位かによって、その方のルーティンの組み立て方が変わるというお話があったかと思うのですが、その点をもう少し詳しく聞かせて頂けますか?
鈴木:ある質問をすることで、交感神経と副交感神経のどちらが優位なのかは大体分かります。
「移動中に寝ることができるかできないか。」それで大体の傾向がでると思っています。
編集部:なるほど。移動中に寝ることができる人は、副交感神経が高めということでしょうか?
鈴木:そういう傾向があると思います。
そういう人は大体、試合をしたとき、エンジンがかかるまで少し時間がかかります。
エンジンをかけるために、試合前に顔を叩いたり、アップの時に心臓を早く動かしたり、アップテンポの曲を聞くようにしてもらっています。
逆に移動中に寝ることができないような交感神経の高い人には、リラックスできる曲をすすめています。交感神経高めな人に限って、試合中に声を大きく出したり、ガッツポーズを多く取ったりしてより交感神経を高めてしまうケースが多いのです。
編集部:もとから交感神経が高ぶっている状況を、更に高めてしまうのですね。
鈴木:そうなんです。
この前もバトミントン女子の試合を録画して大画面のプロジェクターに映して見ていたのですが、彼女は試合前半ガッツポーズや声を出しまくっているのです。出しまくっているのですが、それがどこかハマってなかったのです。見ている限り、メンタルのブレが激しいのが分かりました。そして終盤7点差がついて負けそうな展開になった後の彼女の振る舞いの変化が面白かった。開き直るとともに全くガッツポーズも出さなくなりました。
編集部:それは分かりやすい変化ですね。
鈴木:本当に分かりやすくて。その「ガッツポーズをしない」という振る舞いになると、点数をしっかり取るのです。そして逆転勝利しました。そうなると、声を出したりガッツポーズした方が良いパフォーマンスを出せるというのは本人の思い込みだ、ということに気づくことができ、それを改善しました。
編集部:なるほど。開き直りの境地のようなものは、どのようにコントロールできるのでしょうか?
鈴木:この時の開き直るきっかけとしては、彼女に不利になるようなミスジャッジがあり、彼女の中で「絶対にこの人達には負けない」という気持ちがワーッと出たと言っていました。本当に色々なケースがありますね。
編集部:奥深いですね。
鈴木:コーチング中に一対一で何十分も喋るのですが、ここでの会話は正解ではないと思っています。試合を見ると、一対一で話していたときの内容と全く別の振る舞いをしている(笑)試合後に映像を本人に見てもらい「何か気づくことはないですか?」と振り返りをしたりして。その方が遥かに良いコーチングができます。
僕、うちのオフィスにいらした方に「途中に通過した橋の色は何色でしたか?」と質問することがあるんですね。
編集部:何色・・・。色なんてありましたっけ(笑)
鈴木:そう思うじゃないですか。でも必ず色はあるんですよ。何が言いたいかというと、見ているようで見ていないということです。それと同じように、選手も自分自身の試合を分かっているつもりになっているけれど、見落としている部分がいっぱいあるということです。そこに気づかせてあげられると、本人も客観的に自分を見られるようになる。調子が良いときの振る舞いと、悪いときの振る舞いが分かるので、良いときの振る舞いをルーティンにしていこうと考えています。そうすると、良い結果になりやすいと思います。
自分自身に適したルーティンワークをみつけるために、交感神経優位か副交感神経優位かを知ること、実施しているルーティン内容と結果との関連性を客観的に見ること、などを教えていただきました。自分に適したルーティンをみつけて理想の結果に繋げていきたいですね。
次回は、目標を実現するためのイメージトレーニングについてお届けします。
鈴木颯人
スポーツメンタルコーチ
1983年、イギリスに生まれ東京で育つ。
スポーツ推薦で入学した高校時代にプロを目指した野球で挫折。その時の経験をもとに、脳と心の仕組みを学び、勝負所で力を発揮するメソッドを構築。競技・プロアマ・有名無名を問わず、そのコーチングによって数々のアスリートのパフォーマンスを激変させている。著書に「一流をめざすメンタル術」などがある。
編集:COCOLOLO ライフ magazine 編集部
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