人も動物も、日常のささやかな出来事を心に刻むことで全てが豊かになる。ペットロスカウンセラー・川崎恵さん
現代社会はストレスとの闘いです。「こころを整える」ためにどうすればいいのか、各界の著名人をゲストに招いてCOCOLOLOライフmagazine編集部がメンタル面の変化に着目しながら切り込んでいく「こころトーク」。
今回のゲストは、女性専用の電話カウンセリングサービスでペットロスカウンセラーとして活躍する川崎恵さん。かけがえのない家族であるペットの命が局面に立った時、飼い主の多くは不安や後悔、絶望、罪悪感など様々な感情に心が乱されます。こころのバランスが崩れている人に向けてペットロスカウンセラーが伝える言葉の裏側には「こころを整える」メソッドがあることにCOCOLOLO編集部が注目。
カウンセラーという仕事に興味がある
ペットロスから立ち直りたい
ペットロスに悩む人を励ます方法が知りたい
今回はペットロスになってしまった人に対しての対処法についてお聞きしました。
身近な人がペットロスになってしまったら?言い方1つで人の心は救われる
編集部:もし身近な人がペットロスになってしまった場合「言ってはいけないNGワード」はありますか?
川崎:言ってはいけない言葉の前に、まずは大切な我が子を喪ってしまったという相手の心を理解してあげてください。側にいてくれるだけで救われることもありますから……。
とはいえ、「発してはいけない言葉」は、もちろんあります。とてもデリケートな状態ですから、ちょっとした言葉で心が傷つく可能性もあるんです。例えば以下のような言葉はNGです。
「いつまでも泣いていたらあの子も成仏できないよ」
「あなたが泣いていたら、あなたの涙であの子が溺れてしまうよ」
「たかがペットじゃない」
「新しい子を迎えたら忘れられるわよ」
「ご愁傷様です」
「●歳まで生きたから大往生だね」
最後に挙げた「大往生だね」も実はNGワードです。我が子だからこそ「大往生」なんて関係ありません。できることなら1年でも2年でも長生きしてもらいたいと思うのが飼い主さんの本音です。それから、一般的な言葉として受け止められる「ご愁傷様です」もぬくもりを感じられないので避けた方がベター。また、微妙なニュアンスの伝わりで相手を余計に傷つけてしまうパターンもあります。例えば以下のような言い方。
「辛いですよね、あなたの気持ち分かります」
状況にもよりますが、この言葉は一歩間違えると「私の辛い気持ちなんて、あなたに分からないでしょ!」とかえって相手を傷つけてしまうことがあります。
「辛い気持ちを抱える、あなたが心配なの」
いかがでしょうか?「あなたの気持ちが心配」ではなく「辛い気持ちを抱える、あなたが心配」が寄り添った言い方。同じ意味でも言い回しを変えるだけで受ける印象も変わります。
編集部:では反対に、ペットロスになってしまった人に掛けてあげるオススメの言葉はありますか?
川崎:相手の心を理解すると、その状況に寄り添った言葉が必ず見つかります。ペットロスは悲しんでいるその状態を温かく見守る姿勢が大事。「何かあったらいつでも聞くからね」「悲しんでいいんだよ」「どんなことでもいいから言ってね」など、この人に何か話をしてもいいんだと思える言葉を投げかけてください。以前、私がリスを失いペットロスになった時に救われた言葉で、今でも心に残っている思い出があります。
「今は骨壺が大事なんだよね。今はそうしていたいんだよね。それを持っていたいんだよね」
ペットを喪って悲しみのあまり骨壺を話せずにいた時に声を掛けてくれた友人の言葉は、まさに私に寄り添ってくれた言葉。骨壺を持ったままの状態を認めてくれた一言でした。難しい言葉ではなく、ただ寄り添ってあげる……その姿勢が大切なんです。
ペットロスだけじゃない、毎日の小さな出来事に意識を傾けて思い出を沢山つくることが大切
編集部:ペットロスの初期段階は、生きている時に死の宣告をされた瞬間から、とのことでしたが、ペットロスにならない予防法はありますか?ペットが生きている時にできる心構えを教えてください。
川崎:ペットロスは体調の異常でも病気でもなく、ごく自然な心の反応です。また、ペットロスを通じて死と向き合うことを意識させられるでしょう。そんな時にできるペットロスの予防法が「後悔を小さくすること」です。
今、この瞬間をペットと共に大切に生きることで悲しみや後悔、罪悪感を軽減させることができます。具体的にどうすればよいかというと、とてもシンプルなことばかり。
- 抱っこをしてあげる
- 愛していると言ってあげる
- 毎日観察をする
- ペットの喜怒哀楽を意識する
例えばご飯を食べる時。どんな風に喜んでいるのか?お散歩に行く時、遊んでいる時、その瞬間のペットの表情やしぐさを心に落としてみてください。お日様に当たると、こんな毛色になる……など、日常の小さな出来事や感じたことを心に残していくようにすると、心の豊かさも変わります。そうやって五感を使ってペットと過ごすと、毎日が濃密な時間になります。
編集部:毎日を何となく過ごしていると、つい先日のことなのに忘れてしまいますが、それと同じですよね。一つひとつ気持ちを込めて接すると印象的に残ります。
川崎:たとえ本当にペットを喪ってしまったとしても、心に残っているとそれが救いになります。中には「あの子は幻だったのかもしれない」と感じる方もいますが、心に印象付けることで「幻ではない」「一緒に生きてきたんだ」と共に歩んできた思い出をしっかりと受け止められます。私たちペットロスカウンセラーはそのお手伝いをするのが役目なんです。
今回の川崎恵さんのインタビューでは専門分野である「ペットロス」を切り口にお伺いしましたが、「愛する者」という視点で見れば家族や友人も同じです。「ペットロスは亡きペットへの想いが現れた優しい愛の証。その悲しみを優しさに変えることが私の仕事です」と語る川崎さんの思いやりに溢れていました。
人の心を救いあげてくれるカウンセラーの仕事はまだまだ多くの魅力がありますし、こころを整えるヒントがいっぱい。皆さまも1日1日を大切に過ごしてくださいね。
編集:COCOLOLO ライフ magazine 編集部