共感と同情の違いとは? 心理カウンセラー 石田より子さん
現代社会はストレスとの闘いです。「こころを整える」ためにどうすればいいのか、各界の著名人をゲストに招いてCOCOLOLOライフmagazine編集部がメンタル面の変化に着目しながら切り込んでいく「こころトーク」。
女性のための電話カウンセリングで活躍する心理カウンセラー石田より子さんのインタビュ-の第4回です。カウンセリングを通した「こころとの向き合い方」についてお話をうかがいました。人間関係で悩みが生まれがちな私たちのコミュニケーションにも、大いに役立つお話です。
悩みはキャッチャーミットで「受け止める」
編集部:ここまでCA時代の経験を交えてお話を伺ってきましたが、CAとカウンセラーの共通点はありますか?
石田:CAの経験で役立っているのはクレーム対応で鍛えられた点ですね。あらゆるクレームが最終的にはチーフに回ってきますからね(笑)。
怒ったり、理不尽なことを言うお客様はたくさんいらっしゃいます。そうした時は、相手の話をとことん聴いて、必要であれば「それは誠に申し訳ありませんでした」と平身低頭に謝ります。でも、その時、自分の中に相手の感情を「受け入れる」のではなくて「受け止める」というのがポイントなのです。キャッチャーミットで自分の手前でバシッとボールを受ける感じです。
そういう技術がCA時代にものすごく磨かれたと思っていますし、現在、カウンセリングでクライアントの話を聴くときに活きています。
大事なのは、共感と同情の違いを知ること
編集部:「受け止める」のであって受け入れないのですね。
石田:私たちって小さい頃から「人の気持ちになりなさい」と言われて育っていると思います。だから、悩んだり困ったりしている人を目の前にしたとき、「同情しないといけない」と思いこんでいる人が多いのです。
でも、本当は同情ではなくて「共感」するというのがポイントです。
カウンセリングでは、「そうなんですね、あなたはそう感じているのですね」と受け止めるだけで十分なのです。感情移入してクライアントと同化してしまうと、巻き込まれてしまって後々とても辛くなってしまいます。
アドラーの言葉でいえば、「課題の分離」ですね。人の課題は人の課題。そこへ入り込まない、どこかで俯瞰しているというのがポイントです。
そもそも人には解決する能力がある
編集部:では、石田さんのカウンセリングポリシーのようなものはありますか?
石田:私はカウンセリングするとき、「その人には解決できる能力がある」と信じています。しっかり話を聴いて、共感もするけれど、「あなたにはそれを解決する能力がありますよ」という気持ちを大切にしています。
初めは、電話口で「死にたい」と言われると驚きましたが、よく考えてみれば、カウンセリングを受けようと思ってわざわざ会員登録をして電話してくるという時点で、それだけのエネルギーがあるわけです。つまり、本当は生きたいという気持ちの裏返しだと解釈できます。だから今は、「死にたいほど辛いのですね」と伝え返します。
編集部:電話カウンセリングは表情がわからず言葉だけなので、経験を積んでいないと状況を見極めるのが難しそうですね。
石田:もちろん、悩みの真っただ中にいる段階で、「解決できる能力があるから大丈夫」と無責任な対応はとりません。でも、ある程度回を重ねていくと、この人は大丈夫だな、と確信するときが来ます。そして、こちらがそう思っていると言外に相手にも伝わるのです。
笑いは状況の好転、涙は浄化
編集部:では、石田さんがカウンセリングをしていて、うれしい瞬間はどんな時ですか?
石田:それは、カウンセリング中に笑い声が出た時です。もちろん電話を切った後のその方の行動が大事ではありますが、少なくともそのセッションにおいては、その人が救われた、解放されたというのがわかる瞬間です。
編集部:声だけだからこそ、その変化がはっきり伝わってくるのでしょうか。
石田:そうです。声だけに集中しているので、すごくよくわかりますよ。声のトーンが高くなって明るくなる、軽くなる、そして笑いが出る。相手が笑うときは「一緒に笑ってごめんなさいね~」と断って一緒に笑っちゃいますよ。
笑いが出ると、それだけで事態を好転させますから。
編集部:逆に泣く方も多そうですよね。
石田:はい。多いですよ。泣くことはみなさん我慢されますが。クランアントが泣きたそうなときは、「涙は浄化しますから存分に泣いてくださいね~」といって落ち着くまでじっと待ちます。カウンセリングにおいて、沈黙も大事な時間です。
悩み多き時代に、人と接する際にこころに止めておきたいヒントがたくさん含まれたお話でした。
いよいよ、次回は最終回。石田さんがカウンセリングで目指したい目標やゴールについて、現代女性へのメッセージを込めて話していただきます。
石田より子
心理カウンセラー
航空会社のCAとして34年間勤務。会社在籍中6年間に渡り、コーチ仲間と共に社内コーチングセミナーを毎月開催。2013年、両親の介護のため退職。同時に心理カウンセラー、コーチとして独立。「気軽にカウンセリングを受ける文化」を日本に根付かせることを目標に活動中。著書に、『さぁ、運を引き寄せる達人になろう!』文芸社刊。私生活では、4年間の両親の終末ケアを終えた1年後、5才年下の最適な人と出会い初婚同士で結婚。
編集:COCOLOLO ライフ magazine 編集部