五感をフルに使ってイメージトレーニングをしよう! スポーツメンタルコーチ・鈴木颯人さん

仕事や趣味で最高のパフォーマンスを発揮するにはどうしたらいい?

悩みや不満など、ネガティブな気持ちはどのようにして解決すればいい?

心と身体に休息を与えて、心身のバランスを上手に保つ方法は?

 

現代はストレス社会と言われますが、適度なストレスはヒトの成長に欠かせません。日々「こころを整える」ためにどうすればいいのか、COCOLOLOライフmagazine編集部が様々な分野で活躍する人物からそのヒントを探る「こころトーク」。

前回に続き、数々のアスリートのパフォーマンスをコーチングによって激変させてきた、スポーツメンタルコーチ・鈴木颯人さんにお話を伺いました。COCOLOLOライフmagazine編集部の板生研一(WINフロンティア㈱代表・医学博士)との対談形式で目標を実現するためのイメージトレーニングやゾーンの再現方法について語って頂きます。

 

目標を実現するためのイメージトレーニングとは?

 

編集部:近年話題にのぼることの多い「マインドフルネス」は取り入れていらっしゃるのでしょうか?マインドフルネスとは「いま・この瞬間」に意識を向け、現実をジャッジせずにありのままを感じ取ることだと思うのですが、これまでのお話で選手も試合中に結果にばかりに意識が行き過ぎてしまったり、人は普段マインドフルネスになりにくい生き方をしているなと感じています。

鈴木:僕もそう思っています。自身の理想的な状態に近づくためにイメージトレーニングは効果的だと思っています。瞑想のようなものなのですが、もしかしたらマインドフルネスのやり方に通じるかもしれないですね。

 

編集部:瞑想ですか?

鈴木:はい。例えば、目を閉じてもらって手のひらをギューっと握ってもらったり、呼吸だけに目を向けてもらったり、逆に、身体全部に意識を向けてもらうこともあります。しかし、うまくできない人も多いです。その場合はかなりオーバーなやり方ですが、「自然に行ってきてください」とお伝えすることもあります。

 

編集部:外に出掛けるということでしょうか?

鈴木:はい。等々力渓谷はオススメですよ。
なるべく緑に触れるようにして下さいと言っているので、オフィスの中も緑を増やすようにしています。

 

編集部:フェイクグリーン(本物そっくりの植木)も、フェイクだと分からなければ結構効果があるという研究もあるそうですね。しかし、フェイクだと分かってしまうと効果が落ちるそうです。それだけ人間の心理というのは奥が深いということですよね。

鈴木:そう思います。あと僕が選手によく言っているのですが、視覚からの情報は100%正しい訳ではないということです。五感全体でとらえることが重要です。
外に見える景色は、神経細胞が脳内でイメージとして見せているから見えています。つまり、神経細胞が作り出した脳内現象といえます。ですから脳にとって関心のないものは見えないし、大きさも違って見えたりします。実は音も匂いも感触も、すべて神経細胞が作り出したイメージです。脳科学ではこれをクオリア(脳が主観的に感じる質感)と呼んでいて、その意味では実際に体験していなくても、五感を使ってリアルにある出来事のクオリアを感じることができるなら脳の中ではそれは外界で起こった出来事と同じ出来事になるのです。

 

編集部:なるほど。クオリアをリアルに感じることができれば、脳内では現実の出来事と感じ取るのですね。

鈴木:選手の目標を実現するためにイメージトレーニングを取り入れることがあるのですが、五感をフルに使ってもらいます。聴覚、触覚、味覚、視覚、嗅覚までも使ってもらい、さらにそのときの気持ちまでイメージします。先ほどお伝えしたように脳内では頭の中のイメージも実際に起こった出来事も同じなのでうまくいっている状態を具体的にイメージしておくことで実際に現実に引き寄せる形で結果につながります。イメージトレーニングの効果は科学的にも証明されています。

 

ゾーンの再現方法とは?

 

編集部:うまくいっている理想的な状態というと「ゾーン」が思い浮かぶのですが、ゾーンに入るコツのようなものがあれば教えていただけますか?

鈴木:ゾーンは本人が決めることなので外から見えないですよね。もしかしたら、いまこの瞬間僕のゾーンかもしれないし(笑)よくアスリートが言うのは、すごく時間が長かったけれど短く感じたとか、ゆっくりだったけど早かったとか。時間の概念が相反する感じのことを言うんですよ。
僕も野球をしていたときに感じたあの感覚を呼び起こすことができたらと思い、知恵の輪を使って疑似体験をしてもらっています。

 

編集部:知恵の輪ですか?

鈴木:使ってもらうと夢中になるんですよね。上手くいかないと大抵の人は『外したい』と結果を求め始めます。「うまくできるとかできないとか、そんなことは考えなくていいです。ただ自分のフィーリングで、自分の手の感覚を信じてやってみてください」と伝えると、突然外れたりするんです。その外し方は本人も分かっていない。今夢中になったでしょ?この感覚がゾーンだよって伝えたりしています。
よく野球選手で「どんな球がきたか分からないけど打ちました」ということがありますよね?その感覚はまさにゾーンだと思います。知恵の輪を使うことで、疑似体験ができると思っています。

 

編集部:こんな身近にあるものでゾーンの疑似体験ができるとは驚きです。

鈴木:最近流行りのハンドスピナーを使うこともあります。こちらは見てもらうだけなんですけど。
(ハンドスピナーをクルクル回しながら)どう感じますか?

 

編集部:飽きないですね。アスリートの方はどう感じるのですか?

鈴木:最初は「これどうやって使うんですか?」とか(笑)。その後はただ見てもらって「綺麗でしょう?」「あーそうですねー」という感じに。もしかしたら、その瞬間がもうマインドフルネスかもしれないですよね。

 

編集部:そうですね。意識が完全に『いまこの瞬間』に集中していますね。一定時間見つめ続けるということは、気持ちの切り替えにとても効くかもしれませんね。

 

 

目標を実現するためにはイメージトレーニングがとても有効で、五感をフルに使いそのときの気持ちまでイメージすることが大切と語る鈴木さん。また、知恵の輪のお話はとても心当たりがあると感じました。結果をもとめすぎず、いまここに集中することが大事ですね。

次回はメンタルトレーニング術のビジネスマンへの活かし方についてお届けします。お楽しみに!

 


鈴木颯人
スポーツメンタルコーチ

1983年、イギリスに生まれ東京で育つ。
スポーツ推薦で入学した高校時代にプロを目指した野球で挫折。その時の経験をもとに、脳と心の仕組みを学び、勝負所で力を発揮するメソッドを構築。競技・プロアマ・有名無名を問わず、そのコーチングによって数々のアスリートのパフォーマンスを激変させている。著書に「一流をめざすメンタル術」などがある。


編集:COCOLOLO ライフ magazine 編集部

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