昔と今でどう変わった?現代社会におけるストレスの原因とは? ライフバランスマネジメント研究所 代表 渡部卓さん Vol.1

現代社会はストレスとの闘いです。「こころを整える」ためにどうすればいいのか、各界の著名人をゲストに招いてCOCOLOLOライフmagazine編集部がメンタル面の変化に着目しながら切り込んでいく「こころトーク」。

今回のゲストは、豊富な職場とマネジメント経験をもとに、現代職場特有の問題と改善対策など難解なテーマに対し、専門用語を使わずに数多くの講演・ワークショップをされている渡部卓さんです。現代社会におけるストレスの原因について語っていただきます。

現代社会におけるストレスの原因は主に2つ

編集部:毎週のように企業の人事やメンタルヘルス対策の担当者の方と会話をし、研修や勉強会を実施されていらっしゃると思うのですが、最近の状況について感じていらっしゃることを教えていただけますか?

渡部:15年くらいこの分野でずっと働いてきたのですが、昔は残業でヘトヘトになって体の疲れを訴える方が多かった印象があります。最近は企業によって差はあるものの、残業は減っている傾向にあると思います。今の時代、ストレスの大きな理由は一言でいうと「気疲れ」だと感じます。
上司や同僚というより取引先との人間関係や家族問題、介護の問題などです。
他にはLINEやSNSの中で喧嘩や孤独を感じたりfacebookで「いいね」を気にしてしまったり。繋がっていることが煩わしいという人もいて、こういったSNSのリテラシーが与えるストレスの影響もありますね。

ビジネスの世界で一番大きな変化は、IT社会になったことではないでしょうか。管理のためのインプットが増え、その中で早く帰れと言われる。フェイストゥフェイスなら問題にならないようなことも、報告書の体裁などを気にして時間がかかったり、上司との対話も少なくなるので後々問題になるような“ミスコミュニケーション”というより“ディスコミュニケーション”みたいなストレスが多いですね。

あとはキャリアの問題。転職したがっている人が多いです。会社の行く末が不透明な時代ですし、情報化社会により色々なキャリアの話も入ってくる。昔は身近な周りにしかモデルがいなかったものが、今は周りにモデルがいないかわりに、テレビやネットで情報を大量に取得できて美談も多い。理想が高くなり、こんな上司の下で大丈夫だろうか、など不安がベースになりストレスに繋がっています。

この不安は「漠然たる不安」です。老後の資金や健康、テロなどの政情不安なども含め、漠然とした不安を感じている状態です。今は定年後が長くなっていますよね。ライフスパンが伸びた中で、20~30年後は老後というより折り返し地点くらいの感覚になってしまっています。その中でどう生きるかということが大事になってきている気がします。
元気にやっている人は生きがいをもっている人が多いです。NPOやボランティアをしていたり。ワークライフソーシャルバランスが大切ですね。健康やお金というより、どう過ごすかが大事になっていると思います。

 

IT社会になり、私たちの生活環境は大きく変化しました。そんな中、現代の大きなストレス原因が「気疲れ」と「漠然とした不安」と語られた渡部さん。長寿社会になった今、「どう過ごすか」を意識してワークライフソーシャルバランスをとっていきたいと感じました。

次回はワークライフバランスの整え方についてお話いただきます。お楽しみに。


渡部 卓(わたなべ たかし)

帝京平成大学現代ライフ学部教授、ライフバランスマネジメント研究所代表、産業カウンセラー、エグゼクティブ・コーチ
グローバル企業からベンチャー企業まで、豊富な職場とマネジメント経験をもとに、職場のメンタルヘルス対策、ワークライフコーチングの第一人者として、講演、企業研修、教育分野、マスコミでの実績は海外も含めて多数に上る。著書に『折れない心をつくる シンプルな習慣』、『明日に疲れを持ち越さないプロフェッショナルの仕事術』、『人が集まる職場 人が逃げる職場』などがある。


編集:COCOLOLO ライフ magazine 編集部

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