スランプからの脱却が早い選手と崩れやすい選手との差とは? スポーツメンタルコーチ・鈴木颯人さん

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現代はストレス社会と言われますが、適度なストレスはヒトの成長に欠かせません。日々「こころを整える」ためにどうすればいいのか、COCOLOLOライフmagazine編集部が様々な分野で活躍する人物からそのヒントを探る「こころトーク」。

前回に続き、数々のアスリートのパフォーマンスをコーチングによって激変させてきた、スポーツメンタルコーチ・鈴木颯人さんにお話を伺いました。COCOLOLOライフmagazine編集部の板生研一(WINフロンティア㈱代表・医学博士)との対談形式で、スランプからの脱却が早い人と遅い人の差について語っていただきます。

 

スランプに陥る原因について

編集部:先ほどの中学野球少年の例で、監督さんに「お前は、オドオドしすぎだ」と言われたことがきっかけで、スランプに陥ってしまったという話がありました。スランプに陥るアスリートは、トリガーになる言動なり現象があるということが多いのでしょうか?

鈴木:スランプに陥りやすい選手たちは、恐らくほとんど結果しか見ていません。そしてその結果が長らくでていない人たちだと思っています。なぜ結果が出ていないのか。色々な考え方があるのですが、一つは結果をコントロールしすぎているということです。

 

 

編集部:結果をコントロールしすぎているというのは、結果を意識しすぎているということでしょうか?

鈴木:そうだと思います。結果に意識が行き過ぎているので、簡単に言えば、その結果を出すための過程を無視してしまうようなケースが若年層に多い気がします。
過去に結果が出でいる方法をネットなどで探し、試し過ぎてしまったり。

 

編集部:なるほど。色々な情報にひっぱられてしまい、だんだん自分のものではなくなってきてしまうというイメージでしょうか?

鈴木:そうですね。目移りが本当に激しいですね。そういう子はメンタルというか、性格的に素直ではないタイプの子が多い気がします。

 

編集部:素直じゃないと言われても、結果が出ているものに飛びつきたいと思ってしまう、というのが心理的にあるのかもしれませんね。

鈴木:僕自身野球をやっていたときに、すぐに結果がでないことで近くにいるコーチを信頼できなくなると感じたことがありました。

 

編集部:なるほど。それで、違う人の成功話をひたすら集めたりするのですね。それは良くないことなのでしょうか?自分に合っているものと合っていないものの見極めが難しいということなのでしょうか?

鈴木:結果が出ている情報に飛びついて、それが自分にハマればいいですよね。しかしそれはギャンブル的要素が強いです。もしそうするのであれば、結果を求めず、割り切って色々なことを試したほうがいいと思います。

 

編集部:お試し期間ということですね。

鈴木:でも、結局は結果をセットで求めてしまい、これはダメ、あれはダメ、この人ダメとなってしまうケースが多いのです。

 

スランプから脱却できる人とできない人との差とは?

編集部:なるほど。ではスランプから脱却できる人とできない人の差はどのような部分なのでしょうか?

鈴木:僕は、家と同じようなものだと思っています。大黒柱がしっかり立っていれば、多少周りが倒れたとしても簡単に補修ができる。これは、技術的な部分にもかなり通じると思うのです。自分の中に大黒柱がなかった選手は、全て崩れやすいというイメージがありますね。

 

編集部:それは、「基礎」が大事ということでしょうか?

鈴木:その通りですね。基礎というか「基本」というか。

 

 

編集部:打撃でいうと下半身の安定が重要になる、そういうイメージでしょうか?

鈴木:技術的な話では、「基本」の部分にもトレンドが色々あります。例えば、アメリカメジャーリーグの考えと日本野球の考え方は別だったりするんです。
ボールに対して芯に当てられるかという単純に技術的な部分もあると思いますし、スイングでは色々なドアスイングになってしまうケースもあります。
でもそもそも、基礎的な技術を全うできるフィジカルを持っているかどうか。
そのあたりの「基本」が大事だと思うのです。

 

編集部:スランプに陥った場合どう脱出するかについても聞かせて頂けますか?

鈴木:あるとき、中学生がイチロー選手に「スランプから脱出するにはどうしたらいいでしょうか?」と尋ねたところ、「対処しないことです。つらいかもしれないけど、そのままでやってください。」と答えたそうです。これが真実ではないでしょうか。
僕はスランプというより、バイオリズムと考えるようにしています。肉体や感情などには一定の周期で好不調の波が繰り返されます。不調なときは「今はそういう時期なんだ」と認め、焦る必要は全くありません。
いつもと同じように練習し、たんたんとルーティンをこなすこと。
そうするといつのまにか、スランプは終わっています。

 

スランプに陥った際は結果を求め過ぎないほうがいい。日頃、自分の中に基礎となる大黒柱をつくることが大事と語る鈴木さん。またスランプはバイオリズムと捉え、焦らず開き直りたんたんとルーティンをこなしていくことで脱却できると教えていただきました。

次回は「自分自身にとって最適なルーティンの見つけ方」についてお話しいただきます。

 


鈴木颯人
スポーツメンタルコーチ

1983年、イギリスに生まれ東京で育つ。
スポーツ推薦で入学した高校時代にプロを目指した野球で挫折。その時の経験をもとに、脳と心の仕組みを学び、勝負所で力を発揮するメソッドを構築。競技・プロアマ・有名無名を問わず、そのコーチングによって数々のアスリートのパフォーマンスを激変させている。著書に「一流をめざすメンタル術」などがある。


編集:COCOLOLO ライフ magazine 編集部

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