<男性>の更年期障害(後編)

すぐできる!テストステロン対策とは?

テストステロンを増加ないしは減少させないためには、何と言っても規則正しい生活が重要です。バランスのとれた食事(栄養)、適度な運動、十分な睡眠(休養)はベースになってきます。

●亜鉛の摂取

亜鉛は、テストステロンがエストラジオールやDHTといった他の物質に変化するのを阻害します。またテストステロンを低下させるコルチゾールの生成を抑制します。亜鉛は、牡蠣、卵、などに多く含まれています。ある研究では、食事内容を変えず、 亜鉛サプリメントを摂取するだけで、 わずか6週間でテストステロンの大幅な改善をもたらしたと発表しています。

●ビタミンの摂取

ビタミンCはテストステロンの濃度を下げる効果を持つコルチゾールの数値を下げるので、結果的にテストステロンの数値は上がります。

●アルコールとタバコを避ける

アルコールやタバコはテストステロンの生成量を減少させます。アルコールを多く摂取するとテストステロンからエストロゲンへの変化が進みます。アルコールは体内の亜鉛のレベルを下げます。3週間毎日ビールを飲んだ人と、毎日ノンアルコールのビールを飲んだ人では、テストステロン値が3割近く違っていたという研究結果も出ています。

また、タバコはコルチゾールの生成を増加させることから、 テストステロンの生成量を減少させます。

●筋力トレーニング、適度な運動

筋力トレーニングをすると、テストステロンの分泌が促されます。鉄アレイを手で持ち上げた時に5回上げるのが限界の重さでインターバルは3分でトレーニングを行った場合は20%、10回上げるのが限界の重さでインターバルは1分で行った場合は60%のテストステロンの分泌量が増加されたとのことです。筋力トレーニングや短時間の激しい運動はテストステロンを増やす効果があります。

しかし、運動中にテストステロン生成量をより効果的に高めるには、脱水に注意することと、過度なトレーニングを避けることです。脱水はテストステロンの分泌量を減少させてしまい、また、オーバートレーニングは、ストレスの元でありテストステロンと競合するコルチゾールを増やすため、テストステロンの分泌量を低下させてしまうからです。

体力に自信のない方や、初めての方でも無理なく自分の身体に合わせて行うことができる効果的な運動の一つに「ヨガ」があります。最近は男性の方の受講が急増しているとか。

ヨガはオーバートレーニングになることはなく、また身体全体をくまなく使い、外見だけではなく、身体の中から変わることを手助けしてくれるヨガは、更年期障害の予防や緩和に最適なもののひとつと言えるでしょう。

●体脂肪率を低くする

体内にある脂肪はアロマターゼという酵素を持ち、アロマターゼはテストステロンをエストロゲンに変える働きを持ちます。脂肪の量が多ければ多いほど、アロマターゼの働きは活発になるので、体脂肪率が高いとテストステロンはエストロゲンに変換されやすくなります。なので、体脂肪率は低く保つようにしましょう。

いくつかの研究からBMIとテストステロンは相関関係にあることが分かっています。ただし、痩せすぎや過度なダイエットは、ホルモンバランス・ホルモン分泌が悪くなるため、無理のない減量で適正体重まで戻すことで、テストステロン生成量を増やすことができます。

●十分な睡眠

8時間睡眠をとっている人に比べ、4時間睡眠の男性はテストステロンの分泌が3割ほど少ないようです。テストステロンを増やすには、睡眠時間と睡眠の質が重要です。

ワシントン大学医療センターの泌尿器科教授によると、テストステロンの生成不足は、睡眠時間が足りないことが最も重要な原因であると述べています。ある研究では、1週間の間、睡眠時間を5時間にしたところ、テストステロンの生成量が10~15%低下した、と報告されています。睡眠は時間だけでなく、睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害テストステロン生成量に影響を与えます。

 

前向きに生きるためのホルモン「テストロン」

テストステロンには筋肉や骨をたくましくしたり、ひげや体毛を濃くするなど、男性の身体的特徴に深く関係しています。それだけでなく、性欲や性機能の維持、血液を作る働き、動脈硬化の予防、メタボリックシンドロームの予防、さらには脳の働きなど、男性の健康状態にも影響を及ぼします。

テストステロンには「生きる活力」「生気」「気持ちの張り」といった、バイタリティを高める作用があると言われています。そのような観点で、テストステロンは人として前向きに生きるために必要なホルモンと言えましょう。

<ライター>

田中一秀


高校生から生物に興味を持ち、「将来は海洋生物学者になる!」と決めていたものの、知らぬ間に生物が医学に変わり、理学療法士を目指すこととなる。

在学中はスポーツ・リハビリテーションに傾倒し、筑波大学体育専門学群の様々な授業に参加し、スポーツリハビリテーションの基礎を学ぶ。その後、幼児の発育・発達に興味を持ち、卒業後は肢体不自由児施設、身体障害者擁護施設、高齢者施設などを並行して関わり、ヒトの奥深さを体験する。

学位では放送大学で学士を取得後、修士課程(保健医療学)、博士課程(心身健康科学)に進み、運動学習を中心テーマに研究を続ける。

解剖学、生理学、運動学、教育学、組織論などを中心に研究範囲を広げ、それらを基盤に介護施設を運営している。高齢者・障害者に対して適切な運動指導を行い、結果を出すことを目的に日々奮闘中。

現在のモットーは「心身相関(ココロが変わればカラダも、体が変わればココロも)」。

 

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