仕事がうまくいく秘訣は即時フィードバック。バランスは「ポジティブ多めでネガティブ少なめ」!
累計13,000社400万人以上の組織開発・人材開発を支援する株式会社ラーニングエージェンシー(本社 東京都千代田区、代表取締役社長 眞﨑大輔)および人と組織の未来創りに関する調査・研究を行うラーニングイノベーション総合研究所では、2023年6月19日~8月31日の期間で、484名の管理職を対象に「管理職意識調査」を実施しました。
第1弾*1の「部下へのフィードバックの実態」、第2弾*2の「部下へのフィードバックの手法」に続き、今回は「目標達成につながる部下へのフィードバック」の在り方に焦点を当て、分析結果を公表いたします。
背景
近年の管理職はプレイヤーとマネジメントの二足の草鞋(わらじ)を履きながら、ビジネス環境や社会情勢の変化に臨機応変に対応をすることが求められ、役割は複雑化・高度化していると言われています。中でも、人材の定着や、多様化する人材の育成といったマネジメントの取り組みは、難易度が増しており、多くの管理職の悩みとなっています。当社が2023年に実施した調査*3において、人事担当者が最も注力して取り組みたい育成対象として「既任管理職」が最上位になりました。これらの状況からも、いま多くの企業が管理職の強化を必要不可欠と考えていることがわかります。
調査結果の概要
- 目標達成したことがない管理職は達成している管理職よりも「部下育成」に悩みを抱え、その割合6割超
- フィードバックの「頻度」について、目標達成している管理職は「即時」に行うが最も高く、達成したことがない管理職は「特に頻度は決めていない」が最も高い結果に
- フィードバックの「内容」について、目標達成している管理職は「ポジティブフィードバックが多く、ネガティブが少ない」。一方、達成したことがない管理職は、ポジティブとネガティブの割合は「特に決めていない」と回答する割合が最多
- 目標達成していない管理職ほどフィードバックを「躊躇」する傾向に。その理由、「適切な伝え方がわからなかったから」「もう少し様子を見てからでもよいかと思った」が最多に
- 評価者として感じる課題について、目標達成している管理職は「評価の時間をとれていない」と回答。一方、目標達成したことがない管理職は「部下に嫌われたくない」と回答
調査結果の詳細
1.目標達成したことがない管理職は達成している管理職よりも「部下育成」に悩みを抱え、その割合6割超
所属している部門やチームが目標達成するためには、管理職はメンバーの業務をサポートしつつ、行動や結果に対して適切なフィードバックをしていくことが求められます。本調査では、部門目標・部門計画が毎年達成しているかどうか(以下、「目標達成度合い」と記載)と、管理職の「フィードバック方法」にどのような相関があるか分析しました。
まずは、管理職の「悩み」を見ていきます。最も多い悩みは「部下の育成」であることがわかりました。次に「目標達成度合い」で比較すると、部門目標や部門計画を達成したことがない管理職(以下、「目標達成したことがない管理職」と記載)は、毎年部門目標や部門計画を達成している管理職(以下、「毎年目標達成している管理職」)に比べ「部下の育成」に悩んでいると答えた割合は15.5ポイント高い結果となりました。「目標達成したことがない管理職」の方が部下の育成に悩みを抱えていることがわかります。(図1)
2.フィードバックの「頻度」について、目標達成している管理職は「即時」に行うが最も高く、達成したことがない管理職は「特に頻度は決めていない」が最も高い結果に
次に、フィードバックの頻度について見ていきます。「毎年目標達成している管理職」は「即時フィードバック」をしている割合が25.9%と最も高く、「目標達成したことがない管理職(12.8%)」に比べ、13.1ポイント高い結果となりました。一方、「目標達成したことがない管理職」は、フィードバックの頻度を「特に決めていない」と回答する割合が25.6%と最大の割合となりました。(図2)
3.フィードバックの「内容」について、目標達成している管理職は「ポジティブフィードバックが多く、ネガティブが少ない」。一方、達成したことがない管理職は、ポジティブとネガティブの割合は「特に決めていない」と回答する割合が最多
次に、フィードバックの内容について見ていきます。「毎年目標達成している管理職」は、「ポジティブが多く、ネガティブが少ない」と回答した割合が42.9%と最も高くなりました。この項目は、目標達成するほど高い結果となりました。一方、「目標達成したことがない管理職」は、「特に決めていない」と回答する割合が28.2%と最も高くなりました。(図3)
4.目標達成していない管理職ほどフィードバックを「躊躇」する傾向に。その理由、「適切な伝え方がわからなかったから」「もう少し様子を見てからでもよいかと思った」が最多に
次に、部下へのフィードバックを躊躇する割合を比較してみました。結果、「目標達成したことがない管理職」は66.7%が部下へのフィードバックを躊躇したことがあることがわかり、目標達成できていないほど、躊躇する割合が高くなることが明らかとなりました。(図4)
フィードバックを躊躇する理由にも違いがありました。「目標達成したことがない管理職」は、「もう少し様子を見てからでも良いかと思ったから」と考える割合が「毎年目標達成している管理職」よりも17.1ポイント高く、「適切な伝え方がわからなかったから」と並び最多となりました。
一方、「毎年目標達成している管理職」は「部下の反応に対して不安があるから(38.8%)」「適切な伝え方がわからなかったから(38.8%)」と、フィードバックのスキルに対する不安の項目が上位となりました。(図5)
5.評価者として感じる課題について、目標達成している管理職は「評価の時間をとれていない」と回答。一方、目標達成したことがない管理職は「部下に嫌われたくない」と回答
最後に、管理職は評価者として、どのような課題を抱いているか質問しました。結果、「毎年目標達成している管理職」は、「評価時、ひとりひとり十分に時間をとることができていない(27.0%)」と回答する割合が最も高く、その次に「評価の期間全体で評価せず、直近の部下の状況に引きずられてしまう(26.5%)」が続きました。
一方、「目標達成したことがない管理職」は、「部下に嫌われたくないために、厳しい評価から逃げている(28.2%)」という回答が上位にあがりました。(図6)
まとめ
管理職にとって、部門やチームのメンバーを育成・管理し、目標達成へ導くことは重要な任務です。本調査では、部下への育成手法のひとつである“フィードバック”が、部門目標・部門計画の達成にどれほど影響を与えているか、実態を知るべく、調査・分析を行いました。
結果、目標達成度合いと、管理職が行っているフィードバックには相関関係があることが明らかとなりました。
「毎年目標達成している管理職」は「即時フィードバック」を行う割合が高く、気づいたときにその場で指摘をすることを意識している、もしくは企業としてそのような風土が根付いていることが推察できます。また、「ネガティブよりもポジティブフィードバックが多い」ことも特徴的でした。その反面、約半数の管理職は「部下へのフィードバックを躊躇したことがある」こともわかりました。その理由として「部下の反応が不安」「伝え方がわからない」など、質の高いフィードバックを実現するためのスキルに対して自信のない様子が見受けられました。
一方、「目標達成したことがない管理職」は、目標達成している管理職よりも「部下の育成」に課題を感じている傾向にありました。フィードバックの頻度に関しては「特に決めていない」とする割合が高い点が「毎年目標達成している管理職」との特徴的な違いでした。また、6割以上の管理職がフィードバックを「躊躇したことがある」と回答し、その理由には「伝え方がわからない」「もう少し様子を見てからにしよう」と、具体的なフィードバックの方法や、タイミングについて悩んでいる管理職が多いことがわかりました。
部門を目標達成に導くためには、管理職によるメンバーへの働きかけが鍵とも言えます。部下が期待通りパフォーマンスを発揮するためには、部下の成長を願い、良い点も改善すべき点も即時フィードバックしていくこと。そのためには、フィードバックの正しいスキルを身につけ、自信をもって部下と接していくことが重要です。「なぜフィードバックを行うのか」「どのようにフィードバックを行うのか」といった具体的な手法について習得する機会や、自身のフィードバックを振り返り、改善することのできる機会を設けてみるのもよいでしょう。
考察(組織開発・人材開発の専門家より)
株式会社ラーニングエージェンシー
組織開発コンサルティング本部 開発室 室長
根本博之氏
大阪支社の立上に参画し、営業リーダーとして支社年間目標達成に導いた後、本社にてコンテンツ開発業務に従事。中堅・大企業向けコンサルティング事業部門の責任者を歴任。コンサルタントとして営業活動と講師業務にて、年間100~150社ほど担当する傍ら、社内能力開発・組織開発部門の責任者として活動。
フィードバックと組織目標達成は明らかな相関を示すものの、因果関係とは言えません。それでも、適時適切なフィードバックが組織目標達成にポジティブな影響を与える可能性があり、これは注目すべき点です。
フィードバックが真に効果を発揮すると、部下はもちろん組織全体の成長に寄与し、上司と部下の間のコミュニケーションも活性化します。こうした相互理解と協働の土壌作りにフィードバックが果たす役割は極めて大きいものであると考えられます。
この実現のためにも、フィードバックの重要性を組織全体で認識し、文化を醸成することが必須だと考えます。フィードバックを組織文化として深く根付かせ、持続的な成長を促進するカルチャーとすることは、組織にとって真の競争力を形成する基盤となるでしょう。これはフィードバックの本質的な価値ともいえるものであり、その理解をより深めていくことが求められます。
*1 管理職意識調査 第1弾(部下へのフィードバックの実態編)
https://www.learningagency.co.jp/download/all/news_20231005.pdf
*2 管理職意識調査 第2弾(部下へのフィードバックの手法編)
https://www.learningagency.co.jp/download/all/news_20231013.pdf
*3 人事部の実態調査(社員の育成編)
https://www.learningagency.co.jp/download/all/news_20230126.pdf
調査対象者 | 当社が提供する管理職向け研修の受講者 |
調査時期 | 2023年6月19日~8月31日 |
調査方法 | Web・マークシート記入式でのアンケート調査 |
サンプル数 | 484人 |
属性 | (1)業種
情報通信業 106人(21.9%) 製造業 96人(19.8%) 卸売業,小売業 56人(11.6%) サービス業(他に分類されないもの) 56人(11.6%) 建設業 29人(6.0%) 不動産業,物品賃貸業 20人(4.1%) 学術研究,専門,技術サービス業 20人(4.1%) 運輸業,郵便業 15人(3.1%) 電気,ガス,熱供給,水道業 13人(2.7%) 金融業,保険業 13人(2.7%) 生活関連サービス業,娯楽業 7人(1.4%) 宿泊業,飲食サービス業 6人(1.2%) 複合サービス事業 6人(1.2%) 教育,学習支援業 3人(0.6%) 医療,福祉 2人(0.4%) その他 36人(7.4%) (2)企業規模 1~50人 56人(11.6%) 51~100人 101人(20.9%) 101~300人 198人(40.9%) 301~1,000人 97人(20.0%) 1,001~5,000人 27人(5.6%) 5,001人~ 4人(0.8%) 分からない 1人(0.2%) |
本調査を引用される際は【ラーニングイノベーション総合研究所「管理職意識調査(目標達成につながる部下へのフィードバック編」】と明記ください
*各設問において読み取り時にエラーおよびブランクと判断されたものは、欠損データとして分析の対象外としています
*構成比などの数値は小数点以下第二位を四捨五入しているため、合計値が100%とならない場合がございます
- ラーニングイノベーション総合研究所ラーニングエージェンシーの研究機関であるラーニングイノベーション総合研究所(以下、LI総研)は、人と組織の未来創りに関する様々な調査・研究活動を行っています。LI総研はデータに基づいた最適な解決策もご提供し、お客様の組織開発をサポートしています。
- 株式会社ラーニングエージェンシー 当社は組織開発・人材開発を手掛けるコンサルティング企業です。設立以来、人と組織の成長を支援する業界初*の特許取得込のサービスを多数開発・提供。「LEARNING」の可能性を探求し続け、「人と組織の未来創り」を真にリードできる伴走者、ラーニングコアパートナー®として、お客様に長く貢献してまいります。〈主なサービス〉定額制集合研修「Biz CAMPUS Basic®」/ライブオンライン研修「Biz CAMPUS Live®」/ビジネススキル学習アプリ「Mobile Knowledge®」/転職支援サービス「Biz JOURNEY®」/10万人以上が受検するビジネススキル診断テスト 「Biz SCORE Basic®」*Biz CAMPUS Basic、Mobile Knowledge(For Freshers)は東京商工リサーチ調べ、Biz SCORE Basicはシタシオンジャパン調べ
代表取締役社長 眞﨑 大輔
事業内容 人材育成・教育研修
本社所在地 〒100-0006 東京都千代田区有楽町 2-7-1 有楽町 ITOCiA(イトシア)オフィスタワー18F
URL http://www.learningagency.co.jp/
※「Biz CAMPUS Basic」「Biz CAMPUS Live」「Mobile Knowledge」「Biz JOURNEY」「Biz SCORE Basic」「ラーニングコアパートナー」は、株式会社ラーニングエージェンシーの登録商標です。
Selected by COCOLOLO ライフ magazine 編集部