働く人にも未来ある子どもたちにも、おいしい呼吸味わう時間で自分を労わってほしい 株式会社ブレストラン代表 沖 知子さん 後篇


深い呼吸のカギ「横隔膜」の上下動を意識する「リアルブレス」

編集部:それではいよいよ、ブレストランで行う「呼吸」について教えて下さい。

沖:オリジナルの呼吸法としては、「リアルブレス」という腹式呼吸を行います。
呼吸というと肺をイメージしますが、リアルブレスでは横隔膜に意識を向けます。呼吸を吸うと横隔膜は上がるか?下がるか?どちらだと思いますか?

 

編集部:.....下がり?ますね。

沖:そうです。呼吸を吸うと横隔膜は下がって、吐くと上がります。横隔膜のあるみぞおち部分に両手をおき、呼吸に合わせて横隔膜の動きと共にその手を上げ下げさせます。横隔膜の動きをイメージしながら、呼吸とカラダの連動を感じることで内観しやすくなり、より深い呼吸へと導くことが可能となります。
呼吸は腹式も胸式もどちらも出来るのがいいのですが、日常生活ではどうしても浅い呼吸になることが多く、そうすると肩の方で息をしてしまって横隔膜が動いていません。また、腹式と聞くとお腹に呼吸が入っていると思っている方がいますが、呼吸はお腹には入りません。呼吸は本来、肺の下まで深く入るものですから、しっかり横隔膜を下げることで肺の下まで呼吸の入った深い呼吸がきちんとできていることになります。

 

編集部:この呼吸は何分くらいやるのですか?

沖:企業レッスンの中ではこのリアルブレスを5分くらいやります。そして、レッスン最後には瞑想の時間も設けますが、そこでは呼吸のやり方よりも、その時している自然な呼吸にただ意識を向けることを繰り返して、思考が浮かんだらまた呼吸に戻るという、いわゆるマインドフルネスの中で行われる呼吸をします。

 

自身が心がけるのは、「笑顔」「足の裏」「一物全体」

編集部:それでは、沖さんが日常的に心身のメンテナンスで気をつけていることベスト3を教えて下さい。

沖:まずは「笑顔でいること」ですね。笑顔でいることで自分が幸せですし、周りの人も幸せにできます。笑顔はセロトニンの分泌も促すので心へのアプローチにもつながります。
私はあまりストレスが溜まる方でもないですし、昔から笑顔でいることが多かった気がしますが、ブレストランで起業してより意識して笑顔でいるようにしています。

そして、次に「姿勢」と「足の裏」の意識ですね。正しい立ち姿勢とは、くるぶし、膝、大転子(窪んだお尻の部分)、肩、耳が一直線になります。そして、座ったときは、骨盤を立てて足の裏をしっかりつける。これが姿勢の基本です。

 

編集部:このきれいな姿勢がなかなかとれません...。

沖:たかが姿勢でしょ、と思っている方もおられますが、姿勢を正すだけで呼吸が深く入ります。長時間パソコンをしているときなど、首を前に出して猫背になりますが、あの姿勢で首や肩の僧帽筋にかかる負荷は、正しい姿勢を1としたときの5倍とも言われています。
正しい姿勢がいちばん体に負担がなく、呼吸も深くなるのです。とはいえ、私もだら~っとなってしまうときもあるので、気づいた時は姿勢を正すように意識しています。
どこが正しい位置なのか、そもそも分からないという方には、壁に背を向けて立つ「壁立ち」がおすすめですよ。多分はじめは3分も立っているのでさえ、キツイと感じるかもしれませんが...是非、挑戦してみてください!

そして、姿勢の中でも土台である足への意識を大切にします。何でも積み上げていく土台が大事です。足の裏への意識はレッスンでも取り入れています。

 

編集部:笑顔、姿勢と足の裏、もう一つは何になりますか?

沖:「食」ですね。私はビーガンでもないですし、特に食の制限もしていません。全ての食べ物を感謝していただきますが、マクロビオティックは共感する部分が多くて、自分が食べものを摂取する上で「一物全体」には気をつけています。丸ごと全部食べるので、自ずとオーガニックな食材を買うようにしています。

 

編集部:沖さんはイラッとしたり、イヤなことがあったときはどう対処するのですか?

沖:私の場合、やはりヨガですね。ヨガをやるとすっきりして「まっいいか」と思えるようになります。イラッとして、その場で瞬間的に収めるには、やはり呼吸に意識を向けるようにしています。

 

 

「おいしい呼吸を味わう時間」を、思考の切り替えに役立ててほしい

編集部:ストレス社会を生きる読者へは、どのようなことを伝えたいですか?

沖:とにかく自分を大事にしてあげる時間をとってほしいです。現代の生活は意識が外へ外へ向かい、何かが起こったときに誰かのせいにしたりしがちです。
また、心を病む人たちの傾向として、過去や未来、今ここにないものを反芻して考えて、自分で自分を傷つけてしまうということがあります。

 

編集部:以前マインドフルネスのインタビューをした時も、先生が同じ問題を仰っていました。

沖:切り替えが大事なんです。誰しも悪いことは起こりますが、自分はどうすれば切り替えられるか、切り替えられるポイントを持っていることが大切です。日常生活の中で、少しでもいいので自分を整える時間を持ってほしいと思います。それにつながるのが呼吸でもあります。

華道、茶道などをした後も呼吸が深くなっていることがわかっています。ですから、アートに触れるというのでもいいのではないでしょうか。要は、リラックスできる方法を見つけて自分を労わってあげる、自分を労わることができれば大丈夫なんだよ、ということをお伝えしたいです。

 

編集部:ブレストランでは呼吸を通した時間の提供を大切にされていますよね。

沖:企業研修をしてみると、圧倒的に時間が取れない人が多くて、「1日の5分時間をとってください」とお伝えしてもなかなかできないのが現状です。
極論すれば、ブレストランといえばこの呼吸法をやってください、といったメソッドを提供するわけではなく、普段ないがしろにしている呼吸に意識を向けて「呼吸を味わう時間」をもっていただく、そんなふうに考えています。

 

心が傷ついた時の処方箋として、学校教育を通して呼吸の大切さを伝えたい

編集部:それでは、最後に、今後の抱負をお聞かせください。

沖:ブレストランで「ラジオ体操の呼吸版」を目指したいです。実際ラジオ局に話をしたりもしているのですが、毎日一定の時間、同じことを続けてほしいと思っています。その仕組みを作りたいです。継続は力なりですから。

あとは、教育現場に入っていきたいと考えています。私たちは、歯のみがき方とか、怪我したら水で洗って絆創膏貼りましょうとか、身体をケアすることは小さいことから教えられるからみんな当たり前にできますが、心が傷ついたときにどう対処するかは教えられていません。そして、ほとんどの人が、呼吸というスキルを身につけることでリラックスできるということを知らずに大人になっていきます。

ですから、ダンスが教育現場に入ったように、小学生になったら呼吸やリラックスすることの大切さを学んでほしいのです。

 

編集部:海外などでは既に行われていますか?

沖:アメリカのいくつかの小学校では、何か悪いことをしたら叱ったり怒ったりするのではなく、瞑想ルームに入れて瞑想させるそうです。このプログラムを取り入れたら子どもたちが悪いことをする比率が下がったとも聞いています。
やはり、早い段階で自分と向き合う時間を提供するには、教育の現場を活かすのがいちばんの近道なのではないかと思います。

これからもブレストランという新しいカテゴリーを作りながら、企業だけでなく、子どもたちのいる現場へもどんどん出張して呼吸の大切さを伝えていきたいです。

 


沖 知子(おき さとこ) SATOKO OKI
2007年にヨガと出会いYOGA歴11年。
2014年に資格取得後、多くの企業向けヨガを担当する。
2016年にはMissWORLD JAPANファイナリストに選抜され、初代「ミス・ヨガ」を受賞。その後、ファッションの祭典神戸コレクション出場、ヨガポーズモデルとして様々な書籍・雑誌に抜擢される。
また、海外でのヨガレッスンや世界遺産「金峯山寺」にて寺ヨガを大成功させるなど、国内外問わず多くの実績を積む。
2017年から株式会社ブレストラン、代表取締役を務める。
同年、健康の大切さを伝えるため、日本の地上波では初のヨガ番組「GINZA YOGA」の監修と出演を担うなど多岐にわたり活躍中。


編集:COCOLOLO ライフ magazine 編集部


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