今の自分の状態を知って、呼吸法で自律神経のバランスをととのえましょう 健康経営アドバイザー 藤田友佳子さん 前篇

今回の「こころトーク」は、健康経営アドバイザーの藤田友佳子さん。音楽に合わせた呼吸法「ボディリズム呼吸法」を企業の健康経営に取り入れる活動を推進しています。
ご自身の肺に穴が開いた際に2週間の呼吸法で手術を回避した経験から、呼吸法を通じた未病のケア、ストレスに負けないメンタルヘルスを伝えることを使命だと確信して起業に至りました。楽しくみんなで!をモットーに呼吸法を伝え広めるうちに、ストレス過多、自律神経の乱れから来ていた自身の長年の不調はすっかり消えてしまったとのこと。高まる健康経営への取り組みや、日常生活の動線上に無理なく取り入れるメリットなど呼吸法の魅力について伺いました。前篇、後篇2回に渡ってお届けします。


 

無我夢中の呼吸法で気胸の手術を回避

編集部:まずは、藤田さんが呼吸法に出会ったきっかけを教えて下さい。

藤田:実は4年ほど前に突然声が出なくなりました。元々頻脈があり、その時も心臓の影響だろうと思って病院に行ったのですが、なんと肺に穴が開いていて気胸と診断されました。その場で救急車で運ばれて緊急入院になり、すぐに手術する必要があったのですが、一人暮らしで家族の同意がとりづらかったこともあり、とっさに「手術しない方法はありますか?」と尋ねました。その時先生が「2週間待つから呼吸法で肺を膨らませなさい」と言われたのです。
それからひたすら吐く息を大きくする呼吸法をやりました。すると猶予ギリギリでなんとか穴がふさがって手術をしなくて済んだのです。

 

編集部:呼吸法で肺の穴が塞がるなんて驚きです。

藤田:そうなんです。しかも、入院中は当時資格取得を目指していたキャリアコンサルタントの勉強もしていたのですが、集中力が高まり記憶力が良くなって驚きました。環境の影響もあるとは思いますが呼吸法の影響は大きかったと思います。本当に「呼吸法ってすごいな」と思いました。

 

ストレスチェック義務化を受けてボディリズム呼吸法を広めることに

編集部:入院中の呼吸法がどうやって「ボディリズム呼吸法」につながったのでしょうか?

藤田:肺はすっかり治ったのですが、入院中に持病でもある変形性股関節症がひどくなってしまいました。そんな風に身の上にいろいろなことが起こると「これは何か使命だな」と思うようになるもので、8年間務めていた病院人事の仕事を辞めて、とにかくメンタルヘルスに役立つことで起業しようと思ったのです。

丁度そう考えていた時、随分前に興味を持ってセミナーに行ったことがあったボディリズム呼吸法の創始者である宮浦氏と再会する機会がありました。改めてボディリズム呼吸法に接してみると、音楽があることで呼吸にさらに集中できますし、音楽と組み合わせる呼吸法は新鮮ですごくいいな、これは企業でもきっと求められるだろうと確信したのです。

 

編集部:そこからボディリズムマネジメント協会を立ち上げて法人向けに活動を始められたのですね?

藤田:起業したのは2015年12月です。折しも企業にストレスチェックが義務化されたタイミングでした。ただ、いくらストレスをチェックしてもそれだけではきっと不十分で、自分の状態を知った後でどう対処していくかが大事だと考えました。
ポテンシャルがあると感じたボディリズム呼吸法は、実際に様々な専門家の監修や検証の裏付けがあります。でも私は医師ではありませんので、医療行為はできません。ですから、働き過ぎて自分の心や体を顧みないで体調を崩していく人たちに、呼吸法を通して健康の大切さを伝えるのが私の役割だと考え、まずは企業の健康経営に取り入れてもらうよう協会を立ち上げて活動をスタートしました。

 

 

ストレス過多、睡眠困難、全身の不調。全ては自律神経の乱れだった

編集部:入院されたのは病院で人事の仕事をされていた時とのことですが、当時はストレスフルでしたか?

藤田:そうですね。慢性的に睡眠不足でしたし、いろいろストレスがあったのだと思います。
当時の私は夜中に何度も目が覚めてぐっすり眠れることはありませんでしたし、回転性めまいという持病もあり入院したこともありました。頻脈で突然脈拍が180くらいになってそれが続くと息苦しくなるので、点滴を打ってもらいながら病院勤務をしていたり…。対処療法としてのお薬はたくさん出してもらいました。

 

編集部:その状態で毎日お仕事されるのは相当苦しそうですね。

藤田:明らかに自律神経が乱れていたわけですが、当時はそのことがわかりませんでした。自分で体調不良は自覚していたものの、それでも元気だと信じていました。でも、今思えば当時の私は働き過ぎで自分の心と体と全く向き合っていなかったと反省します。

 

まずは自分を知る。そして、状態に合った呼吸法を取り入れる

編集部:それでは、そんなご自身の経験も踏まえて現在行っている法人向けの活動について教えて下さい。

藤田:今は健康経営で「プレゼンティーイズム」という言葉があります。出社してはいるものの、何らかの不調のせいで本来発揮されるべき業務上のパフォーマンスが低下している状態を指します。不調だった時代の私のような社員がたくさん働いているのはすごく生産性が悪くて会社としても問題です。ですから、会社として、そして何よりも社員一人ひとりが健康の大切さを知ることから始めなくてはなりません。

法人向けに講習を行うときにはメンタルヘルスの座学も行いますが、何よりもまずは自身の今の心身の状態を知ることが大事だと思っています。ですから、受講者のみなさんには必ずCOCOLOLOのアプリをインストールしてもらって、呼吸法を行う前に測定を行い、その結果に応じた呼吸法を実践して、その後どう変化したかをもう一度測定してもらいます。

 

編集部:自律神経の状態をビフォーアフターで一人ひとりがチェックするのですね。

藤田:要は自律神経のバランスを整えることが肝心なのです。自律神経には交感神経と副交感神経があるのですが、日中、特に職場で多くの方は交感神経が働きすぎている状態です。そういうときには副交感神経を高め、バランスを取る呼吸法を行います。一方で副交感神経が働きすぎてボーッとしているような方には、交感神経を高める呼吸法をします。大きくこの2パターンで、これらをうまく取り入れてもらえるようにお伝えします。
呼吸を通して自律神経のバランスが整ったことがアプリの測定結果で確認できると、それだけでもやって良かった~という気持ちになりますし、続けたい気持ちにもつながります。

 

 

職場の日常シーンにプラスすることで様々な相乗効果が生まれる

編集部:実際に法人に向けに取り入れてもらうとき、どのような点を工夫されていますか?

藤田:とにかく続けてもらうことが課題です。ですから、職場に導入する際には、なるべく職場の日常的なシーンに取り入れてもらうようお願いしています。例えば朝礼とか、昼休みとか、もともと社員が休憩したり集まったりするシーンに上手く組み込んでもらいます。また、会議で意見が出なくなったときなども呼吸法をするのはおすすめです。息を合わせるという言葉通り、初対面でも距離が縮まりコミュニケーションも活性化します。また、息を吐くことで内に溜まりがちな意見も発言しやすくなり、場の雰囲気を変えることにもひと役買います。

今は健康経営に取り組むことでホワイトな企業の証にもなる時代です。経産省の健康経営優良法人認定取得のサポートをさせていただいた企業の中には、楽しそうにボディリズム呼吸法に取り組む様子をサイトに掲載して下さって、その後採用の応募者数が急増したとうれしい悲鳴をあげているというケースもあります。呼吸法がきっかけの一つになって企業イメージまで上がるのはとてもうれしいことですね。

 

後篇に続く


藤田 友佳子(ふじた ゆかこ) YUKAKO FUJITA

健康経営アドバイザー。1日1分でココロとカラダを整える呼吸法「ボディリズム®」の専門家、株式会社Tree of Heart代表取締役並びに日本ボディリズムマネジメント協会の代表理事。
自身の体調不良を呼吸法とストレッチ運動によって改善した経験から「呼吸」「運動」の効果を身をもって体感。いつでも・だれでも・どこでも楽しく出来る呼吸法「ボディリズム®」は生産性が向上する健康経営の具体的な施策として高く評価され、全国各地、様々な業界の企業で登壇している。


編集:COCOLOLO ライフ magazine 編集部

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