日本で死因2番目の心血管疾患。アーモンドスナッキングによる心臓の健康への効果を検証

世界最大のアーモンド生産地である米国カリフォルニア州の約7,600のアーモンド生産農家ならびに100を超える製造加工業者で組織される「カリフォルニア・アーモンド協会」(本拠地:米国カリフォルニア州モデスト)は、アーモンドの摂取と心臓の健康に関する新たな2つの研究結果を発表しました。これらの研究結果では、アーモンドの摂取が心臓の健康に新たな効果をもたらすことが明らかになりました(1,2)。心血管疾患(CVD)は世界で最も多い死因であり、日本においても死因の第2位を占めています。そのため、改善が可能であるCVD危険因子の食生活を改善することは、アメリカで毎年2月に推進されている心臓月間において、最も重要な課題の一つです。

心血管疾患に対するアーモンド摂取の効果を解明する研究は、今から25年以上前に、一価不飽和脂肪を多く含むアーモンド摂取が血中コレステロール値に及ぼす影響を初めて調査したことから始まりました(1)。それ以降20年以上にわたり、カリフォルニア・アーモンド協会は、アーモンドが血中脂質やその他の心臓病の危険因子に与える影響を調査する研究に資金を提供してきました。そして今回、2020年に発表された、心拍変動(HRV)と血流依存性血管拡張反応(FMD)を研究対象とした新たな2つの研究により、この探究はさらに進展しました。

これらの一連の研究結果は、キングス・カレッジ・ロンドンの研究者によって実施されたATTIS試験により導き出されました。ATTIS試験は、「Almonds Trial Targeting Dietary Intervention with Snack(間食としてのアーモンドの食事介入試験)」の略で、カリフォルニア・アーモンド協会が資金提供しています。ATTIS試験は、平均以上の心血管疾患リスクを持つ被験者を対象に、6週間にわたり毎日、アーモンドを間食する群(アーモンド群)と、典型的な英国のスナック菓子と同量のカロリー、栄養素を調整されたスナックを間食する群(対照群)を無作為に分けて調査する並行群間比較試験として実施されました。各被験者は調査期間中、毎日、1日に必要とされる推定エネルギー量の20%に相当するアーモンド、または対照スナックを摂取しました。これらの研究は、30歳から70歳までの英国の男女を対象に行われました。この研究結果のデータに基づき、研究者は心臓の健康に関連するさまざまな側面を分析しました。

1.アーモンドと血管健康に関する研究(2)
以前の研究結果と同様、本研究により、アーモンドを間食として摂取することで、血管の健康の重要な指標である内皮機能が改善し、LDL(悪玉)コレステロール値が減少したことがわかりました。対照群と比べ、アーモンド群では、血流依存性血管拡張反応の検査を通して評価される内皮機能の改善が見られました。健康な心血管の指標である血流依存性血管拡張反応の改善は、血流の増加によって動脈が容易に拡張できることを意味する一方で、内皮機能の低下はアテローム性動脈硬化の発症と進行を促す強力な予測因子と見られています。対照群と比べアーモンド群では、LDLコレステロール値の減少が見られましたが、肝脂肪やその他のいくつかの指標(中性脂肪、HDLコレステロール、グルコース、インスリンなど)については、両群間に差はありませんでした。

キングス・カレッジ・ロンドンの栄養科学の共同研究者および准教授であるウェンディ・ホール(Wendy Hall)博士は、次のように述べています。「本研究では、心血管疾患リスクの高い英国の成人グループにおいて、英国で消費される典型的なスナック菓子の代わりにアーモンドを摂取することが心臓の健康増進に役立つことが示されました。アーモンドを摂取するグループでは、LDLコレステロール値が減少し、動脈の健康の指標である血流依存性血管拡張反応が改善されました。私たちの研究チームは、心血管疾患リスクに関する既存のデータに基づいて、長期にわたり典型的なスナック菓子の代わりにアーモンドを摂取することで、心血管イベントの調整された相対リスクが30%低減する可能性があると予測しています。」

調整相対リスクは、食事の変更などの疾患予防措置を取らない人に対して、疾患予防措置を取る人に起こるイベントの確率です。

本研究の限界は、開始時の心血管代謝危険因子に群の間で差があったことにあります。また、無作為化試験を実施したグループでは、男性の割合が30%であったため、調査結果が男性にはあまり当てはまらない可能性があり、調査対象の性別による不均衡が見られます。さらに、参加者は自由に生活しており、アーモンドの摂取に関しては規則が守られていたことが確認されたものの、報告された食物摂取量に関しては不正確な可能性があります。

研究概要

  • 「ホールアーモンドを6週間にわたり間食することで、健康な成人の内皮機能が改善し、LDLコレステロール値が低下する一方、肝脂肪や他の心血管代謝危険因子には影響しなかった:ATTISによる無作為化比較試験」。
  • 『The American Journal of Clinical Nutrition』、nqaa100、https://doi.org/10.1093/ajcn/nqaa100。Vita Dikariyanto、Leanne Smith、Lucy Francis、May Robertson、Eslem Kusaslan、Molly O’Callaghan-Latham、Camille Palanche、Maria D’Annibale、Dimitra Christodoulou、Nicolas Basty、Brandon Whitcher、Haris Shuaib、Geoffrey Charles-Edwards、Philip J Chowienczyk、Peter R Ellis、Sarah E Berry、Wendy L Hall。

研究内容

  • 本研究では、食事介入による無作為の並行群間比較試験を行い、平均以上の心血管疾患リスクを有する成人において、アーモンドの摂取が心血管代謝危険因子に与える影響を調査しました。本研究では、英国の成人グループにおける平均的な間食摂取量と同量のカロリーと炭水化物/脂肪/タンパク質組成を含む対照食品を摂取した群と、アーモンドを摂取した群の両群における影響の違いを調べました。
  • 30歳から70歳までの成人(アーモンド群n=51、対照群n=56)を対象に、必要なカロリーの20%に相当する素焼きアーモンド、または対照食品を6週間にわたり間食として摂取してもらいました。その後、心血管内皮機能(血流依存性血管拡張反応)、肝脂肪、コレステロール値と中性脂肪を含む血中脂質、ブドウ糖、インスリン、インスリン抵抗性、肥満と血糖調節に関連するホルモン(レプチン、アディポネクチン、レジスチン)、およびその他の既知の心血管疾患危険因子を含む心血管内代謝危険因子を測定しました。
  • 本試験開始に先立ち、対照食品が脂質、血圧、体重・体組成に中立的な影響を与えることを確認するために、3週間の試験を実施しました。

研究結果

  • 調査の結果、典型的なスナック菓子の代わりにアーモンドを摂取することで、内皮機能や心臓の自律神経機能が改善し、LDLコレステロール値が下がることが示されました。
  • アーモンド群では、対照群と比較して、内皮依存性血管拡張の増加が見られました。(平均差4.1%の測定単位、95%CI 2.2、5.9)
  • アーモンド群では、対照群と比較して、血漿中LDLコレステロール濃度の低下が見られました。(平均差-0.25mmol/L、95%CI -0.45、-0.04)
  • アーモンド群では、対照群と比較して、アーモンドを摂取した後の夜間に、長相心拍変動パラメータである超低周波成分が増加したことから(平均差337ms2、95%CI 12、661)、副交感神経の調節が改善したことが示されました。
  • 以前に報告されたコホート研究の集積データに基づくと、健康なグループが6週間にわたってスナック菓子の代わりにアーモンドを摂取することで観察された変化により、これまで心血管疾患を患ったことがないグループに関しては、長期的にアーモンドを間食し続ける場合、スナック菓子をアーモンドに置き換えなかった場合と比較して、心血管イベントの調整相対リスクを32%減少させると予測されます。
  • 肝脂肪には群間差はありませんでした。また、中性脂肪、HDLコレステロール、ブドウ糖、インスリン、インスリン抵抗性、レプチン、アディポネクチン、レジシン、肝機能酵素、フェチュインA、体組成、膵臓脂肪、細胞内脂質、便中短鎖脂肪酸、血圧、24時間の心拍変動率にも群間差はありませんでした。非HDLコレステロールはアーモンド群で減少しましたが、HDLコレステロールに変わりはありませんでした。

研究の限界

  • 本研究の限界は、ベースライン時の心血管疾患危険因子に群間で差があったことにあります。また、無作為化試験を実施したグループの男性の割合が30%であったため、調査結果が男性にはあまり当てはまらない可能性があり、調査対象の性別による不均衡が見られます。さらに、参加者は自由に生活しており、アーモンドの摂取に関しては規則が守られていたことが確認されたものの、報告された食物摂取量に関しては不正確な可能性があります。

2.アーモンドと心血管系ストレス反応に関する研究(3)
心拍間隔の周期的な変動を示す指標である心拍変動(HRV)は、ストレスに対する心血管系の反応を示す重要な指標です。心拍変動が大きいほど、環境的・心理的課題に対する心臓の適応性が高いことを示し、一方、心拍変動が小さいと心血管疾患や心臓突然死の確率が高くなります。今回の分析では、ATTISの研究チームが、研究室で精神的ストレス課題を与えられた被験者の心拍変動を測定したところ、典型的なスナック菓子の代わりにアーモンドを6週間にわたり摂取した被験者は、心拍変動の測定値の一部に改善が見られました。

研究者たちは、安静時(5分間横になっている状態)と、短時間の精神的ストレス課題を与えるストループテスト実施時で、被験者のリアルタイム心拍数(HR)と心拍変動(HRV)を測定しました。

激しい精神的ストレスを加えたときに、アーモンド群の被験者は心臓の回復力がより高いことが示されました。これは、対照群に比べて、アーモンド郡の被験者は心拍数の調節能力が優れていたという結果により実証されており、心拍間隔(拍変動の指標)値を評価する、高周波成分(HF)において、統計的に有意差があったことによって示されています。

本研究の限界は、開始時の心血管代謝危険因子に群間で差があったことにあります。また、被験者は自由に生活しており、アーモンドの摂取に関しては規則が守られていたことが確認されたものの、報告された食物摂取量に関しては不正確な可能性があります。最後に、心拍変動(HRV)の増加メカニズムには不明な点があるため、さらなる研究が必要です。

研究概要

  • 「ホールアーモンドを6週間にわたり間食することで、健康な成人の精神的ストレス時の心拍変動は増加した:無作為化比較試験」。
  • 『Nutrients 2020』、12(6)、1828; https://doi.org/10.3390/nu12061828。Vita Dikariyanto、Leanne Smith、Philip J Chowienczyk、Sarah E  Berry、Wendy L Hall。

研究内容

  • 本研究では、食事介入による無作為化並行群間比較試験を行い、平均以上の心血管疾患リスクを有する成人において、アーモンドの摂取が心血管代謝リスクに与える影響を調査しました。本研究では、英国の成人グループにおける平均的な間食摂取量と同量のカロリーと炭水化物/脂肪/タンパク質組成を含む対照食品を摂取した群と、アーモンドを摂取した群の両群における影響の違いを調べました。
  • 30歳から70歳までの成人(アーモンド群n=51、対照群n=56)を対象に、必要なカロリーの20%に相当する素焼きアーモンド、または対照食品を6週間にわたり摂取してもらいました。その後、心血管内皮機能(血流依存性血管拡張反応)、心拍変動、肝脂肪、インスリン抵抗性、血中コレステロールと中性脂肪、体組成を含む、心血管内代謝危険因子を測定しました。
  • 試験開始に先立ち、対照食品が脂質、血圧、体重・体組成に中立的な影響を与えることを確認するために、3週間の試験を実施しました。
  • 安静時と精神的ストレス時に、それぞれ5分間、被験者の心拍数(HR)と心拍変動(HRV)を測定しました。
  • 被験者に仰向けに寝てもらい、携帯型心電図モニターを使用して、ストループテスト(精神的ストレス)実施前(安静時)と実施中のそれぞれで、リアルタイム心拍変動を測定しました。安静時の心拍変動値を記録してから15分後に、5分間のストレステストを実施しました。
  • 胸に装着した心拍計と専用の分析ソフトウェアを使用して、高周波(HF)成分と低周波(LF)成分、およびLF/HF比を含む心拍変動パラメータを測定しました。

研究結果

  • アーモンド群、対照群ともに体重、総エネルギー摂取量に変化はありませんでしたが、アーモンド群では食事の質(食物繊維が多い、飽和脂肪に対する不飽和脂肪の割合が良好、マグネシウム、カリウム、ビタミンE、リボフラビンの増加、ならびに総炭水化物、デンプン、遊離糖、ナトリウムの減少)が改善されました。
  • 精神的ストレス時(ストループテスト)に関しては、アーモンドを摂取した後では、対照群と比較して、高周波(HF)成分が124ms2(95%CI 11、237)多いことが示されました。LF/HF比は、対照群と比較して1.0(95%CI-1.9、-0.1)低下しました。精神的ストレス時における他の指標では差は認められませんでした。
  • 安静時においては、食事介入後の心拍変動指標の変化に両群間で有意差は認められませんでした。

研究の限界

  • 本研究の限界は、ベースライン時の心血管疾患危険因子に群間で差があったことにあります。また、参加者は自由に生活しており、アーモンドの摂取に関しては規則が守られていたことが確認されたものの、報告された食物摂取量に関しては不正確な可能性があります。最後に、心拍変動の増加メカニズムには不明な点があるため、さらなる研究が必要です。

アーモンドの摂取と心臓の健康に関する研究結果のまとめ

  • アーモンドは、食物繊維(手のひら一杯分の28g当たり3.5g)と15の必須栄養素(マグネシウム(28g当たり76mg)、カリウム(28g当たり76mg)、ビタミンE(28g当たり7.2mg)など)を含んでおり、地中海式ダイエットやDASHダイエットのような心臓の健康を増進させるダイエット計画に最適です。
  • 証明はされていませんが、科学的証拠から、飽和脂肪とコレステロールの低い食事の一環として、アーモンドなどのナッツ類を1日あたり1.5オンスを食べることで心臓病のリスクを減らせることが示されています。手のひら一杯分のアーモンド(28g)には、13gの不飽和脂肪とわずか1gの飽和脂肪しか含まれていません。
  •  内皮機能とLDLコレステロール値の改善の度合いから、典型的なスナック菓子の代わりにアーモンド(総カロリーの20%、手のひら一杯分のアーモンドを2.5回または70g相当)を摂取することで、英国のこの成人グループに関しては、調整相対心血管疾患リスクを32%減少させる可能性があることが示唆されています。典型的なスナック菓子をアーモンドに置き換えることは、毎日の栄養摂取にプラスの影響を与え、心血管の健康を改善する役割を果たす可能性があります。
  • 一般的なスナック菓子の代わりにホールアーモンドを間食すると、精神的ストレスに対する心拍変動パラメータが増加し、心臓の自律神経機能が改善したことが示されました。アーモンドを毎日の間食に取り入れることは、ポジティブなライフスタイルの変化として推奨され、コレステロールを下げるだけでなく、精神的ストレスに対する回復力を高めることで、心血管の健康を増進させることができます。
  •  本研究結果は、システマティック・レビューとメタアナリシス4によって裏付けられており、心臓の健康増進に効果があるダイエット計画としてアーモンドが有効であることを示す多くの証拠を提供しています。

カリフォルニア・アーモンド協会の栄養研究担当アソシエイト・ディレクターのスワティ・コルガオンカル(Swati Kalgaonkar)は、次のように述べています。「当協会は、研究結果に限らず、アーモンドを摂取することの利点について、できる限りのことを研究しようとする、この確固たる栄養学研究プログラムを誇りに思っています。アーモンドの摂取が心臓の健康をどのようにサポートするのかについて理解を深める研究は、25年以上にもわたって行われてきました。LDLコレステロールの低下から、心臓の健康に直結する血管の改善に至るまで、アーモンドというおいしい自然食品を食べる理由について、多くの人と共有できることを大変嬉しく思います。」


 

掲載元:PR TIMES

Selected by COCOLOLO ライフ magazine 編集部