働く女性のウェルビーイング実感は55点。柔軟な働き方に加え、企業の健康サポートが課題

HER-SELF女性の健康プロジェクトは、2020年11月に、20歳~65歳の有職女性1,000人と、20歳~65歳の現職で人事部担当の男女400人を対象に、「働く女性のウェルビーイング」および健康経営における「人事担当者の”女性の健康”への意識」を調査しました。
コロナ禍を経て、働き方は大きく変化しました。フレックスタイム制やテレワークなど柔軟な働き方の実施状況とウェルビーイング実感値の関係、健康で働き続けることに対する意識、さらに、企業が女性の健康保持・増進に向けたサポート制度や取り組みを実施できているかについて調査を行いました。以下に報告いたします。
※ウェルビーイングとは、肉体的にも、精神(メンタルヘルス)的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることを指します
■調査結果総括
今回の調査でHER-SELF女性の健康プロジェクトとして初めて、働く女性の「ウェルビーイング実感」の平均点を調査したところ、100点満点中55点という結果になりました。コロナ禍前後での働き方の変化とウェルビーイング実感の変化の関係を、「ウェルビーイング実感が上がった」と回答した人で比較したところ、フレックスタイム制やテレワークなど柔軟な働き方を実施・継続できている人は33.1%、できていない人は14.3%と、18.8ポイントの差があり、フレックスタイム制やテレワークといった柔軟な働き方がウェルビーイングの向上に寄与していることが推測されます。一方で、フレックスタイム制やテレワークなど柔軟な働き方を実施・継続できている人であっても、1/4以上が、ウェルビーイング実感が下がったと感じていることも明らかになりました。柔軟な働き方以外の具体的な制度やサポート体制を整える必要がありそうです。

また、有職女性の4割は年齢を重ねても長期的に働き続けられるかどうかに不安を抱いている一方で、企業の人事担当者の7割弱が、健康保持・増進をサポートできていないと回答し、企業のさらなる対応が求められるといえそうです。

■調査結果サマリ―
<有職女性への調査>
①働く女性に聞いた「ウェルビーイング実感値」は100点満点中平均55点
②健康に関する理由が原因で、収入が下がったと回答した人は21.1%、仕事を休職した人は10.2%、仕事を辞めた人は10.0%という結果に
③有職女性の4割の人が歳を重ねても長期的に働き続けられるかどうか不安に感じていることが明らかに
④有職女性の7割近くが、コロナ禍でも働き方の変化がなかったと回答
⑤フレックスタイム制やテレワークなどの柔軟な働き方を実施および継続できた人(33.1%)は、できていない人(14.3%)に比べて、ウェルビーイングが18.8ポイント高い結果に
⑥コロナ禍を経て、フレックスタイム制やテレワークなど柔軟な働き方を継続している人であっても、1/4以上の有職女性が、ウェルビーイング実感が下がったと感じている
⑦ 有職女性は自身の職場において、健康のために「検診や受診のための有給休暇制度」や「生理休暇」などの制度や取り組みが必要であると感じている

<人事担当者への調査>
①人事担当者の約7割が女性従業員に対して女性の健康保持・増進をサポートできていないと回答
②「検診や受診のための有給休暇制度」は大企業においても4割程度の企業でしか実施できていないことが明らかに
③ 6割の人事担当者が女性従業員から自身の健康課題に関して相談を受けたことがないと回答

■有職女性向けアンケート調査概要
調査名:働く女性のウェルビーイングに関する調査2020年度
調査方法:インターネットリサーチ
調査対象者:20歳~65歳 女性
調査サンプル数:1000名(20代・30代・40代・50代以上 各250名)
調査期間:2020年11月3日(火)~2019年11月5日(木)

■人事担当者向けアンケート調査概要
調査名:企業の女性の健康に対する取り組み調査2020年度
調査方法:インターネットリサーチ
調査対象者:20歳~65歳 男女 現職で人事部担当 全国
調査サンプル数:400名
調査期間:2020年11月3日(火)~2019年11月5日(木)

■調査結果
<有職女性への調査>
1. 働く女性に聞いた「ウェルビーイング実感値」は100点満点中平均55点
その点数をつけた理由を自由回答で聞いたところ、「対面式の仕事なので、コロナに感染するリスクが高い。手指の消毒やマスク着用を徹底しているが手荒れ肌荒れで気持ちが落ち着かない」(55点・福島県・48歳)、「現在の仕事が肉体的にいつまで続けられるかがわからず不安」(75点・千葉県・26歳)、「年齢的に健康面で更年期に入っているので、身体が辛い日があるが、フレックスタイムの制度があれば、体調に応じて働けると身体の負担が軽減されるので、点数があがる」(80点・和歌山県・53歳)といったコメントが見られました。
自由回答で言及されたワードを分析したところ、「お金」関連ワードが約14%*1、「健康」関連ワードが約10%*2、「コロナ」関連ワードが約10%*3出現しており、このようなトピックスが働く女性のウェルビーイングを左右していることがわかりました。

※1自由回答のうち、収入・給与・給料・金・経済のワードの出現数合計144件
※2自由回答のうち、肉体・健康・体力・病・体調のワードの出現数合計102件
※3自由回答のうち、コロナ・感染・自粛のワードの出現数合計92件

2. 健康に関する理由が原因で、収入が下がったと回答した人は21.1%、仕事を休職した人は10.2%、仕事を辞めた人は10.0%、という結果に
「健康に関する理由で、自身の仕事に支障をきたしたり、キャリアに影響したと感じたことがある」と回答した方に、「健康に関する理由がどのように仕事・キャリアに影響しましたか。経験のあるものをお選びください。」と質問したところ、「休みをとることがあった(38.8%)」と回答した人が最も多い結果になりました。
他にも「仕事を休職した(10.2%)」「仕事を辞めた(10.0%)」などが上がっており、健康上の理由が、女性の仕事やキャリアに及ぼす影響は大きいと言えます。

3. 有職女性の4割が、歳を重ねても長期的に働き続けられるかどうか不安に感じていることが明らかに
「健康で働き続けることに関して、不安に感じていることをお選びください」と質問したところ、「年齢を重ねても長期的に働き続けられるかどうか(40.5%)」と回答した人が最も多く、次いで「不安なことはない(26.5%)」「健康状態に合わせた柔軟な働き方ができるかどうか(24.6%)」、「健康状態が収入に影響を及ぼすかどうか(23.6%)」と続きました。仕事と健康維持の両立の、収入などの経済的な不安もあることがわかりました。

4. 有職女性の7割近くが、コロナ禍でも働き方の変化がなかったと回答
「ご自身の勤務先では、コロナ禍を経て、フレックスタイム制やテレワークなど柔軟な働き方を実施していますか。」と質問したところ、約7割の人が「働き方の変化はなかった(69.1%)」と回答しました。

5. フレックスタイム制やテレワークなどの柔軟な働き方を実施および継続できた人(33.1%)は、できていない人(14.3%)に比べて、ウェルビーイングが18.8ポイント高い結果に
「コロナ禍前と比較して、ご自身の働く上でのウェルビーイング実感はどう変化しましたか」と質問したところ、「コロナ禍に実施し、現在も継続している」と回答した人の33.1%(非常に良くなった5.8%、ややよくなった27.3%)がよくなったと回答しました。一方、「コロナ禍に実施したが、現在は実施していない」と回答した人の、14.3%(ややよくなった)がよくなったと回答しましたが、「コロナ禍に実施し、現在も継続している」と回答した人と比較すると、ウェルビーイング実感が18.8ポイント高い結果となりました。このことから、フレックスタイム制やテレワークなどの柔軟な働き方は、働く上でのウェルビーイング実感に寄与していることが伺えます。

6. コロナ禍を経て、フレックスタイム制やテレワークなど柔軟な働き方を継続していても、1/4以上の有職女性が、ウェルビーイング実感が悪くなったと感じている
設問5では、フレックスタイム制やテレワークなどの柔軟な働き方は、働く上でのウェルビーイング実感に寄与していることがわかりました。
一方で、「コロナ禍に実施し、現在も継続している」と回答した人に、「コロナ禍前と比較して、ご自身の働く上でのウェルビーイング実感はどう変化しましたか」と質問したところ、28.7%(やや悪くなった23.7%、非常に悪くなった5.0%)の人が悪くなったと回答し、フレックスタイム制やテレワークなど柔軟な働き方を継続していても、1/4以上の有職女性が、ウェルビーイング実感が悪くなったと感じていることが明らかになりました。

7. 有職女性は自身の職場において、健康のために「検診や受診のための有給休暇制度」や「生理休暇」などの制度や取り組みが必要であると感じている
「あなたのお勤め先の職場で、女性の健康を支援・サポートするために必要であると感じる制度や取り組みについて答えてください」と質問したところ、「検診や受診のための有給休暇制度(27.6%)」と回答した人が最も多く、次いで、「生理休暇(25.5%)」、「子宮頸がん、子宮体がん、乳がんなどの検診受診の促進(17.7%)」「がん治療・通院のための休暇・休職制度(17.4%)」という結果になりました。
健康に関して、検診や受診のための有給制度や治療のための休暇・休職制度、生理休暇など具体的な制度が必要とされており、企業の女性への健康支援体制への整備が求められています。

<人事担当者への調査>
1. 人事担当者の約7割が女性従業員に対して女性の健康保持・増進をポートできていないと回答
「お勤め先の職場では、女性従業員に対して女性の健康保持・増進に向けたサポート制度や取り組みを実施していますか。」と質問したところ、65.8%(実施したいが着手できていない13.3%、全く実施できていない17.0%、把握していない・わからない35.3%)が実施できていないと回答しました。

2. 「検診や受診のための有給休暇制度」は大企業においても4割程度の企業でしか実施できていないことが明らかに
「お勤め先の職場では、女性従業員に対して女性の健康保持・増進に向けたサポート制度や取り組みを実施していますか。」と質問したところ、3割(積極的に実施している10.3%、多少は実施している24.0%)が実施していると回答しました。
実施していると回答した3割の人に「お勤め先の職場で、女性従業員に向けた健康保持・増進のサポート制度や取り組みのうち、実施しているものをお答えください」と質問したところ、有職女性から最もニーズが高かった※4「検診や受診のための有給休暇制度」については、1,001名以上の大企業であっても42.0%の実施状況であることがわかり、有職女性の希望と企業の実施状況に乖離があることが伺えます。
※4有職女性への設問7「あなたのお勤め先の職場で、女性の健康を支援・サポートするために必要であると感じる制度や取り組みについて答えてください」と質問したところ「検診や受診のための有給休暇制度」が最も多い回答になった

3. 6割の人事担当者が女性従業員から自身の健康課題に関して相談を受けたことがないと回答
「あなたが、お勤め先の職場で、女性従業員から自身の健康課題関して相談を受けたことがある内容をお答えください」と質問したところ、6割(59.5%)の人事担当者が、「相談を受けたことがない」と回答しました。
一方、相談の内容の中で「健康を理由とした配置転換(9.3%)」「健康を理由とした勤務形態変更(9.0%)」「健康を理由とした業務負荷軽減(8.3%)」など、勤務形態に関する相談も一定数あることがわかり、それぞれの健康状態に合わせた働き方を実現することで、健康で長く働くことができる人が増える可能性が示唆されます。

■清水なほみ / 産婦人科医
ポートサイド女性総合クリニック ビバリータ 院長
NPO法人女性医療ネットワーク理事
通常の婦人科診療のみならず、最新の脳科学×心理学×医学を統合的に駆使した診療を行う婦人科医。中学時代のいじめや研修医時代のうつ経験から、「病は気から」を科学的に解明するための研鑽を積む。何気ない会話の中で患者に気付きを与え、片頭痛やイライラをあっさり「忘れさせる」診療には定評がある。

■清水なほみ先生コメント
生産性を上げるためには、どのようにしてこのウェルビーイングを上げていくかが大きな課題であるという「認識」を持つことが第一歩となるでしょう。
就労している女性の健康管理を考える上では、本人のライフステージとホルモンステージ別にどのようなトラブルが起こりうるのかを把握しておくことが重要です。

<年代別に起こりうる健康問題>
20代~30代前半  :月経痛・PMSなどの月経関連症状および子宮頸がん
30代後半~40代前半:筋腫や子宮腺筋症による過多月経・不妊症・子宮頸がんや乳がん
40代後半~50代  :周閉経期の月経不順や更年期障害・子宮体がんや乳がん

<ライフステージ別に起こりうる健康問題>
妊娠中    :つわり・切迫流産や切迫早産・腰痛・頭痛・精神的不安定さなど
産後     :排尿障害・腰痛・うつ状態など
育児期や介護期 :心身の疲労などに注意

女性特有の健康トラブルは、上記のように多岐にわたります。月経困難症を放置するだけでも、症状によるパフォーマンスの低下や急な休職などによる労働損失は決して無視できる規模ではありません。ぜひ一人ひとりが検討していただきたい課題です。相談役としての中間的職務に女性を配置したり、オンラインで専門家に健康相談できるシステムを導入したりするなど、まずは、「何があるとよりよくなるのか」について当事者からの意見に耳をかたむけてみてはいかがでしょうか。
最後に、就労する側の意識として必要なことは、「何となくの不調を放置しない」ことです。
寝込むほど月経痛がひどかったり、月経前に集中力が低下してミスばかりしてしまったり、いつも通りに過ごせていないと感じる症状があれば、早めに婦人科や女性内科を受診して専門家のアドバイスを受けるようにしてください。自分で日々できる健康維持を行いつつ、適切なタイミングで専門家の力をうまく活用していきましょう。

■白河桃子 / 昭和女子大学 客員教授、相模女子大学大学院 特任教授
東京大学 大学院情報学環客員研究員
東京生まれ。慶応義塾大学文学部卒業後、住友商事などを経て執筆活動に入る。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員、内閣府男女局「男女共同参画会議専門調査会」専門委員などを務める。著書に『ハラスメントの境界線 セクハラ・パワハラに戸惑う男たち』(中公新書ラクレ)など25冊以上がある。

■白河桃子氏コメント
7割近くの女性がコロナ禍でも働き方の変化がなかった」というのは、保育、介護、スーパーなど、対面で働くエッセンシャルワーカーに女性が多いことも考えられます。
今の社会の土台を支えるのはまさに女性たち。その方たちが「健康不安」を抱えつつ働く現状は、社会の根幹が揺らぐという危機です。女性が健康でいてこそ、子どもやお年寄りも健康でいられる。女性ワーカーの健康を支えることは社会的に大きな相乗効果があります。
一方、女性の健康課題について人事課題としては3割以下しか認識されていない。テレワークやフレックスタイム制度だけではないサポート体制が脆弱であるからということも、今回の調査で露見したのではないかと思います。“女性はいつもニコニコ、機嫌よく”というステレオタイプの払拭や、女性活躍推進のための理解と制度整備、そしてその制度が使いやすく、誰もが柔軟に働ける風土・環境づくりが急務です。
働き方のパラダイムシフトが起きている今こそがチャンスでしょう。

■「HER-SELF女性の健康プロジェクト」とは
女性個人と働く環境を整える企業の双方へのアプローチで、健康と経済に貢献するプロジェクトです。
HER-SELFには2つの想いを込めています。
1.「herself=女性自身」が健康でいきいきと活躍できる世の中を作りたいという想い
2. HER=女性個人 と、女性を取り巻く周囲の人々を表す言葉の頭文字、S.E.L.F.を合わせ、さまざまなステークホルダーとのパートナーシップで女性の健康を実現していくという想い
S= Society(社会)/ E=Employer(雇用主、企業)/ L=Life Partner(パートナー)/ F=Family and Friends (家族や友人)

■「HER-SELF女性の健康プロジェクト」のゴール
1.各企業の生産性向上
女性の健康に寄与し、仕事でベストパフォーマンスを出せる状態・長く働き続けられる状態を目指します。

2.日本経済の成長
女性の健康状態に起因する経済損失を削減することを目指し、日本全体の経済成長に貢献します。

3.SDGs達成への貢献
目標3「すべての人に健康と福祉を」
目標5「ジェンダー平等を実現しよう」
目標8「働きがいも経済成長も」に貢献します。

■「HER-SELF女性の健康プロジェクト」発足の背景
昨今、少子化・人生100年時代の到来により、「健康で長く働くこと」の社会的要請が高まっています。経産省の調査によると、日本の全従業員数のうち約44%(2016年)をしめる女性の健康問題対策への取り組みを増やすことで、企業の更なる活性化につながるとされています。
例えば、女性特有の月経随伴症状などによる労働損失は4,911億円と試算されており、健康経営を通じて女性の健康課題に対応し、女性が働きやすい社会環境の整備を進めることが、生産性向上や企業業績向上に結びつくと考えられています。

 

厚生労働省「我が国社会保障制度の構成と概況」より事務局作

経済産業省「健康経営における女性の健康の取り組みについて」より事務局作成

■「HER-SELF女性の健康プロジェクト」が取り組むこと
・働く女性に対する、健康で活躍するための情報提供
・企業に対する、女性の健康への理解促進・環境整備のためのサポート

■「HER-SELF女性の健康プロジェクト」が取り組むテーマ

本プロジェクト発足の第一弾として、ジャパンフリトレー主催の「オンライン腸会議2020~ながら腸活のススメ~」を2020年9月29日に開催しました。今後も、各参画企業のイベント・動画配信・店頭展開・書籍発刊など、「HER-SELF女性の健康プロジェクト」の情報を発信してまいりますのでご期待ください。

■参画企業(50音順)
ジャパンフリトレー株式会社 / 帝人株式会社 / 株式会社ティップネス / ポッカサッポロフ―ド&ビバレッジ株式会社

■協力団体(50音順)
一般社団法人 国際ヘルステック協会 / NPO法人 女性医療ネットワーク / 一般社団法人 日本パーソナル管理栄養士協会/

■協力企業(50音順)
株式会社エスクリ

 


 

掲載元:PR TIMES

Selected by COCOLOLO ライフ magazine 編集部