ネガティブな感情に触れるからこそ、心の状態をマイナスからゼロにする努力を。ペットロスカウンセラー・川崎恵さん
現代社会はストレスとの闘いです。「こころを整える」ためにどうすればいいのか、各界の著名人をゲストに招いてCOCOLOLOライフmagazine編集部がメンタル面の変化に着目しながら切り込んでいく「こころトーク」。
今回のゲストは、女性専用の電話カウンセリングサービスでペットロスカウンセラーとして活躍する川崎恵さん。かけがえのない家族であるペットの命が局面に立った時、飼い主の多くは不安や後悔、絶望、罪悪感など様々な感情に心が乱されます。こころのバランスが崩れている人に向けてペットロスカウンセラーが伝える言葉の裏側には「こころを整える」メソッドがあることにCOCOLOLO編集部が注目。
カウンセラーという仕事に興味がある
ペットロスから立ち直りたい
ペットロスに悩む人を励ます方法が知りたい
今回は、カウンセラーになるために必要なスキルと心の在り方についてお聞きしました。
心の闇に触れるからこそ、カウンセラーは心構えと専門性が必要
編集部:川崎さんのようにペットロスカウンセラーを考えている人は世の中に多くいると思います。負の感情と向き合わなければいけない「カウンセラー」を目指すために必要なことは何でしょうか?
川崎:カウンセラーは人の心を扱わせて頂く職業です。抱えきれないストレスや悩みを持ってやってくる人がいるから中途半端な気持ちではできません。相手の心の痛みを感じ、その人が本来持つ力を信じて寄り添い続けることが何よりも大切なんです。だから、そのための心構えと専門性、そしてスキルが必要だと思います。
編集部:人の心に触れる、とてもデリケートな仕事ですよね。それに一人ひとりの悩みの原因も違うから「カウンセラーになりたい!」と思う気持ちだけでは難しいですよね。
川崎:確かに勉強すればカウンセラーになれる、という訳ではありません。時代と共に社会状況が変わるから過去の知識が通じないことも多く、実務経験の中で学んでいくことも。ペットロスに関しても今と昔の現状は全く違います。大家族から核家族へと家族形態が変わることで、家族の中でペットが担っている役割も大きく変わってきました。
常にアンテナを張って家族環境や人の心の変化を敏感に感じ、既存の知識に頼らないことが大切だと思います。
編集部:どんな人がカウンセラーに向いていると思いますか?
川崎:まず、本当にその人の想いになって話を聞けること。それから、学ぶ意欲や専門性を高めていくモチベーションと、よりよいセッションができるように気持ちを維持すること。大きく見て、この2つでしょうか。相手の気持ちを理解するという点では同じ経験をするのも大事。ペットを飼って、ペットを愛して、ペットと一緒に過ごして、ペットロスの苦しみを自分自身も経験して。同じ経験を持つことで人の心に寄り添えるペットカウンセラーになれると思いますし、実際にペットロスカウンセラーの多くが、ペットを飼っていた経験をお持ちの方が多くいらっしゃいます。
ペットを飼ったことがない方でも、身近にいる動物たちの命を守りたい・知りたい想いや、飼い主さんがペットを失って悲しんでいるのを見て寄り添いたいと感じたことをきっかけに、ペットロスカウンセラーを目指すケースもあるかと思います。
編集部:ペットロスカウンセラーになって良かったなと思うのはどんな時でしょうか?
川崎:一般的に言えば自分の成長と社会貢献です。でも、個人的な感情で言えば日々の出来事で、その都度「良かったな」と思います。ペットロスのカウンセリングは飼い主さんと長いお付き合いになります。だから電話はもちろん、お手紙やメールなどからも気持ちの変化が見れるんです。ペットが亡くなると、片腕をもぎ取られてしまったような苦しみを味わいます。生きていくことも辛いし、豊かさが失われていく感覚になることも。だから心がケアされて回復した時に、「この子(ペット)から学んだんだ」「この子(ペット)と出会えて良かった」と飼い主さんが言葉にしてくださった時は本当に嬉しいですね。
ペットロスは死がテーマとなるため少し重い印象を受けますが、「愛を貰う・愛をあげる」これを学ぶ機会でもあります。ペットは愛そのもの。その最愛の死を身近に感じるからこそ「今、この瞬間が大切なんだ」と気付かされるし、辛い気持ちを乗り越えて、出会えたことに感謝ができるんです。
メンタル管理は日常にある小さなご褒美を沢山つくること
編集部:カウンセラーは心を扱うお仕事ですが、ご自身のメンタル管理はどうされているのでしょうか?
川崎:カウンセラーはお客様と向き合うお仕事ですので孤独になりやすい傾向があります。組織の中に属しているわけではなく、個人と接する世界ですので、孤独がストレスになりやすい環境です。だから、同じカウンセラー仲間と意見交換をしたり勉強会に足を運ぶなど、自分から積極的に外との交流を作るよう心掛けています。それから、自分の本音が言える人をつくること。人の気持ちの揺れ動きに敏感になるので、ちょっと気持ちが落ちているなと感じたら信頼できる人に伝えて心のバランスを整えます。
編集部:心のバランスを整える……大切ですよね。信頼できる人が近くにいない時はどうされますか?
川崎:私の場合、小さなご褒美を用意しておきます。「今、心が乱れているな……」と思ったら、自分の好きなことを実行するんです。例えば、お茶を飲んだり、お菓子を食べたり、アロマを炊いたり、愛犬と散歩したり。日常の中にある小さな幸せを常に用意しておくとストレス対策になりますよ。だから日頃から「幸せだな〜」と思ったらコレが私の小さなご褒美なんだと意識しています。心の状態をマイナスからゼロにする努力は必要ですね。
編集部:メンタル管理ができていない人はどのような状態になってしまうのでしょうか?
川崎:一途になり過ぎてしまう人は自分のメンタル状況に気付けていない可能性があるかもしれません。気付けていない時は、1つのことに没頭している状態であることが多いので、少し自分に優しくなった方が良いタイミングと言えます。ただ、没頭している最中は、自分自身ではなかなか気付くことができません。もし周囲から自分を心配するような声掛けがあったり、「疲れてない?」という意見が周りからある時は、自分のメンタル状況がよくない可能性を疑ってみてください。ストレスに気付いたら、先ほどもお伝えしたように「小さな幸せ」を感じることが大事。ストレスを感じにくい人、メンタル管理ができている人は、「好き」を身の回りに置いています。「好き」を増やす行為って実はとても大切なんですよ。
電話カウンセリングと対面カウンセリング、それぞれが持つメリットとは?
編集部:川崎さんはお電話で話すタイプのカウンセリングも行っていますが、直接話すカウンセリングとはどのような違いがあるのでしょうか?
川崎:対面と電話の違いで1番分かりやすいのは目の前に相手がいるか・いないかです。これだけで気持ちの面でも大きく変わります。対面カウンセリングの場合、カウンセラー視点からお話しすればご相談者様の心理状況が分かりやすいという利点があります。何か発言した時に視線を逸らしたなど、目の動きや仕草といった小さな動きで心理分析ができます。また、お客様にとっても自分の話を目の前でしっかり聞いてくれるという安心感があるので、心を開きやすく、リアルにお互いを感じられます。
電話カウンセリングの場合、対面のようなメリットはありませんが、相手が見えないからこそ本音を言える……というケースもあります。カウンセラーも声からの情報が全てとなりますので、声のトーンや喋りの早さ、間の空け方、耳から入る声の情報に集中することで、そこから相手の本質が見えてくることも。
ペットロスカウンセリングの場合、助けを必要としてカウンセリングを受けようと思っても、精神的に外に出たくないと思う人が大半です。電話カウンセリングなら、家から電話をするだけで悩みを打ち明けることができますし、何よりも人目を気にせず泣きたい時に思いっきり泣けます。誰かに話したい!と強く思った時に手軽に連絡ができるから、そういった意味では対面にはないメリットですよね。
編集部:電話カウンセリングが必要なタイミング、川崎さんはどう思われますか?
川崎:誰にも自分の本音を言えない時、でも誰かに聞いてほしい時、専門的な話を聞きたい時。人それぞれ悩みは異なるので一概には言えませんが、家族や友人に話せないと感じた時は専門的な知識を持つカウンセラーに相談するタイミングだと思います。
ペットロスになってしまうと後悔や罪悪感が先立ってしまい、どうすればいいのか分からない状態になります。家族間の温度差に悩む人、外で元気にお散歩している他のペットが許せないと思う人、獣医さんの処置に納得ができない人……。抱えきれない苦しみを乗り越える方法が分からないと感じたら相談してほしいですね。
初めての電話カウンセリングは緊張するかもしれませんが、最初から悩みに触れることはありません。「ちゃんと泣けていますか?」と全く違う視点から入り、少し気持ちをほぐして「泣ける環境」を作った上でカウンセリングに入ります。大人になると泣くことを我慢してしまいがちですが、悲しみを心に溜めておくとペットロスが長期化してしまうんです。泣くことを許してあげる、この気持ちを気付かせてあげるのもカウンセラーとしての役目だと感じます。
カウンセラーは人の心を扱うとてもデリケートな職業です。だからこそ、常日頃から自分自身のメンタル管理が必要となります。
次回のインタビューでは川崎さんの専門分野であるペットロスについて詳しくお伺いしました。ペットロスに関する大切な事ばかりですので、興味のある方はぜひチェックしてくださいね。
編集:COCOLOLO ライフ magazine 編集部