「笑顔は幸せを呼ぶ」は本当か?~フェイスエクササイズが心身に与える影響を紐解く(後編)
「仕事の顔」が現代人から心身の健康を奪っている
生活習慣病は現代社会がもたらした病です。今日、表情についてトラブルを抱えている現代人が増加しているのも、それと同じ。生活習慣が生んだ必然と言わざるをえません。
誰でも子供の頃は感情を素直に表現します。嬉しかったら無邪気に喜び、悲しかったら泣き、嫌悪や怒りさえも、全て包み隠さず表情に出します。
でも社会人になると、仕事上やむを得ず、自然な表情表出が減少します。そのため、筋肉は急速に衰えてしまうのです。
仕事の内容による影響も大きいでしょう。例えば、長距離ドライバーなど、コミュニケーションの機会が少なく、無表情でいる時間が長い仕事であれば、すぐに顔の運動不足に陥ってしまいます。
また、仮に表情を作っていたとしても、職業柄、同じ表情ばかりというケースもあるでしょう。これも良くありません。ずっと片腕だけ使う仕事をしていたら、身体のバランスが崩れてしまうのと同じです。
さらに、偽りの表情ばかり作っていると、精神健康に良くないとする研究もあります。笑顔には本能の笑い、社交的な笑い、緊張緩和の笑いの3種類があるとされますが、このうち健康に一番良いのは、程よい緊張から解放された時の緊張緩和の笑いです。
逆に最も良くないのが、社交上の嘘の笑い。接客業の人はプライベートで悲しいことがあったとしても、笑顔でいることが求められます。表情は作っていても、これではメンタルヘルスに良い影響は与えません。
インターネットが当たり前の世の中になり、Face to Faceのコミュニケーションが減ってきています。表情を作る機会はこれまで以上に減り、そうすると、今までにはなかったような社会問題や病気が生じることも懸念されます。
顔のトレーニングの認知度はまだまだ低い現状ですが、こうした時代背景からも、今後より重要度が増してくるのではないかと思っているんです。
いつでもどこでもできる手軽さ。運動習慣の入り口に
なぜ私がここまでフェイスエクササイズの良さを確信しているかと言えば、それはもともと、私自身の問題に端を発しているからです。
20代のころ、フリーアナウンサーとして海外のラジオ局に勤めていた時期がありました。大好きな仕事でしたが、昼夜逆転の生活が続き、自律神経のバランスを崩してしまったんです。人と会いたくなくなり、自然な表情が作れなくなりました。
解決するため、心と表情の関係について自分なりに調べていくうちに、アメリカの心理学者ポール・エクマン博士の研究を知りました。「人は嘘をつくと、必ず表情のどこかに表れるため、嘘を突き通すことは絶対にできない」というような内容でした。
その内容に「表情をここまで科学的に分析できるのか」と驚かされ、学びを深めていく中で辿り着いたのが、英国の予防医学機関が科学的根拠に基づいて体系化した、このフェイスエクササイズでした。
当時、日本には顔の運動について正しく学べる環境がありませんでした。メソッドとしてはあったとしても、どれも確かな理論や科学的根拠に基づいたものではなかった。であれば、自分が正しい顔の運動法を広める役割を担いたいという気持ちで、活動を続けています。
メンタルヘルスという点で言えば、正直なところ、運動するのは顔でなくても構わないんです。それこそピラティスなどは最適でしょう。ただ、身体を動かすには場所や時間、経済的な制約もあります。中には、身体を動かすのが苦手な人だっていますよね。日本には運動無関心層が7割もいるとするデータもあります。
その点、フェイスエクササイズは、いつでもどこでも誰でもできる手軽なものです。その手軽さから、習慣化して続けてくれる人も多いようです。
フェイスエクササイズを通じて、運動嫌いな方が一人でも多く効果や運動の気持ち良さを実感してくれたら、それに越したことはありません。そうやって、運動が苦手な人が身体を動かすようになるための、窓口にもなっていけたらいいですね。
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