「笑顔は幸せを呼ぶ」は本当か?~フェイスエクササイズが心身に与える影響を紐解く(前編)

世は空前の健康ブーム。ヨガやピラティスといった身体全体を扱う定番のものに加えて、最近では顔痩せトレーニングやフェイスヨガなど、「顔」に特化したメソッドも、メディアで取り上げられる機会が増えている。

こうしたフェイストレーニングの多くは、美容やアンチエイジングといった文脈で紹介されるものだ。だが、そこから一歩進んで、顔トレがもたらすメンタルヘルスへの効果に着目しているのが、NPO法人国際ホリスティックフェイス協会代表理事の岡本るみ子さんだ。

岡本さんは、英国予防医学機関・英国健康運動指導士協会認定のフェイスエクササイズスーパートレーナーの資格を、日本人として初めて取得。筑波大学大学院で自ら研究を続けながら、確かなエビデンスに基づいた顔の筋肉のセルフケアメソッドを、日本に普及させようと活動している。

「笑う門には福来たる」ということわざもあるように、笑顔が人間の幸福感と関係しているという考え方は、昔からあるものだ。では実際に、表情と心の健康との間には、どのような関係があるのか。

そして今、なぜ「顔」なのか。岡本さんに話を聞いた。

 

精神の健康を増進する、呼吸とリズミカル運動のコンビネーション

英国の研究機関によれば、身体と比べてこんなに小さい顔の中にも、全部で57種類、表情表出に関係する表情筋に限っても、20種類の筋肉があることが分かっています。鍛えないと衰えていくのは、身体の筋肉と同じ。筋肉が衰えれば、表情は乏しくなっていきます。

日常生活で使われる顔の筋肉は全体の20~30%に過ぎないと言われていますから、意識して動かさないと、自然と衰えていってしまいます。

また、身体の筋肉は骨と骨とに繋がっていますが、表情を表出する表情筋には、一方は骨、もう一方は皮膚や筋肉に繋がる「皮筋」という特徴があります。つまり、身体の筋肉に比べて骨による支えが少ない分、身体の筋肉以上に衰えやすいと言えるのです。

顔のトレーニングが必要なのはそのためですが、顔の筋肉は身体の筋肉と比べて繊細なので、正しい方法でケアしなければ皮膚を傷めかねません。運動する前には十分に筋肉をほぐし、内部温度を高める必要があります。テレビなどで紹介されている激しすぎる運動も、皮膚を傷つけてしまうので注意が必要です。

そのため当協会のプログラムは、経穴指圧、フェイスリフトマッサージ、表情筋トレーニング、フェイスヨガを組み合わせた総合的な内容にこだわっています。繊細な構造をした顔の筋肉を動かすのには、スポーツをする前の準備体操以上に十分に準備をしてあげる必要がありますし、一つ一つの動きも、他のメソッドを経験した人からは驚かれることもあるほど小さな動きです。

単になまった筋肉を鍛えて、シワのない顔を作ったり、表情を豊かにしたりすることだけが目的ではありません。その先に、メンタルヘルスへのポジティブな効果があることが研究から明らかになってきています。カナダの脳神経外科医ペン・フィールド博士の脳の地図からも読み取れるように、顔の運動による高次脳機能への影響は無限の可能性を秘めていると私は考えています。

なぜ表情筋のトレーニングがメンタルヘルスにも効果があると言えるのか。それは、丹田腹式呼吸とリズミカルな運動を組み合わて行うものだからです。経穴の指圧やフェイスヨガは、常に息を吐いているときにポーズをとります。この点が、他のメソッドと最も異なるところです。

丹田腹式呼吸が唯一、自分の意志で自律神経を整える有効な手段であることは、すでに広く知られていますね。さらに、そこにリズミカルな運動を組み合わせることで、心身の安らぎに関与するといわれるセロトニン神経を活性化することができるのです。

この辺りは、常に呼吸をしながら動くピラティスがメンタルヘルスに効果的だということと、通じるところがあるのではないでしょうか。

続きは後編で。

 

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