人はなぜ落ち込むのか?否定的な考えをポジティブに修正する方法とは
同じ話題を話しているはずなのに、話していた相手によって「前向きになれる!楽しい!」とポジティブな気持ちになる場合と「やっぱりダメだよね……」とネガティブな気持ちになる場合があります。このように同じ話題であったとしても考え方ひとつで印象はガラッと変わるもの。
考え方とは遺伝的な要因や過去の経験から蓄積されて形成されるものですので当然の事ながら人それぞれ異なります。ですが、少し視点を変えてみるだけで毎日がもっと楽しく過ごせる可能性があるのも事実。
今回のコラムでは、人が落ち込む要因を解説するとともに、自分の思考をより良い方向に変換していく方法をお届けします。
物事を白黒はっきり決めつけてしまう人はうつ病やパニック障害になりやすい!?
人は成長するにつれ、さまざまな経験を通して学びます。そしてそれと同時に「スキーマ」と呼ばれる思考のクセを内面に蓄積させていくものです。その過程の中で「これは正しい」「これは間違い」と自分の中での正解を見出す人も少なくないはず。例えば、このような考えを例に挙げてみましょう。
常に美に対する高い意識を持っている人なら……
「シミひとつない透明感のある肌でないと美肌と呼ばない!」
毎日仕事に励むビジネスマンなら……
「仕事で業績を残すことは当たり前、失敗は許されない!」
人から嫌われたくない、人間関係を気にする人なら……
「周りに嫌われたら幸せになれないに決まっている!」
このように自分なりの「生き方ルール」ともいえるのがスキーマです。誰もが持っている感覚ですが、「こうだ!」と正当化する一方で否定的な考えが出てしまうのも人間の心理です。
「シミひとつない透明感のある肌でないと美肌と呼ばない!」
→肌にシミやシワが増えた……他の人より劣っているかも
「仕事で業績を残すことは当たり前、失敗は許されない!」
→また失敗してしまった、どうせ何をやっても失敗する
「周りに嫌われたら幸せになれないに決まっている!」
→仲間はみんな自分を嫌っているに違いない
自分のスキーマを上手くコントロールできない人は、上記のように根拠のない否定的な考えが自動的に頭に浮かび、行動や感情に影響を与えてしまいます。こうしたものの捉え方は認知パターンの歪みと呼ばれ、この症状を改善させる方法が、アメリカの精神科医アーロン・ベックが提唱した「認知療法」と呼ばれる心理療法なのです。
物事を白黒はっきりさせたがる完璧主義者タイプや業績や愛情など特定の事に対して依存してしまう人、承認欲求や報酬欲求が強い人は認知の歪みが起こるとうつ病やパニック障害に陥りやすい傾向があると言われています。落ち込みやすい人も、このスキーマがマイナス方向に働き、認知の歪みが日常的に発生している可能性があるというわけです。
認知の歪みを修正させる方法とは?
では、ネガティブな感情を自動的に引き起こしてしまう「認知の歪み」を正すにはどうすればよいのでしょうか?認知療法の具体的な方法として頭に入れておきたいのが「否定的な考えを肯定してあげる」です。認知とは現実の受け取り方やものの見方を意味しますが、認知に働きかけて心のストレスを軽くしていくことが認知療法・認知行動療法の基本です。例えば、先ほど挙げた3つの例を肯定してあげると下記のようになります。
「シミひとつない透明感のある肌でないと美肌と呼ばない!」
→シミができるくらいアクティブに活動していたのね!
「仕事で業績を残すことは当たり前、失敗は許されない!」
→完璧にこなすよりもちょっと抜けているくらいが愛嬌あるし好感が持てる
「周りに嫌われたら幸せになれないに決まっている!」
→嫌われていると気にするより自分が周りを好きになろう、感謝しよう
日常的な場面を切り取れば、認知の歪みに繋がるシチュエーションはまだまだあります。
- 飲みかけのジュースがコップ半分しかなかった
- 肯定派:まだ半分も残っている!ラッキー!!
- 否定派:半分しかない……もっと飲みたかったのに最悪だ
- 40歳の誕生日を迎えた
- 肯定派:人生まだまだ長い!やりたいことを思いっきり楽しもう!
- 否定派:もう40歳。体力も減って見た目の老化もイヤ……
- いつも家事をしない夫が料理を作ってくれた
- 肯定派:私のために作ってくれたの?ありがとう!嬉しい!
- 否定派:私が頼りないから夫が呆れて家事に手を出してきている?
いかがでしょうか。こうしてみると、考え方の視点を少し変えるだけで気持ちの落ち込みレベルも変わりますよね。人は誰しも心の奥底で特定のものを愛し、それにしがみつきます。信じるものがあるからこそ、それは言葉や行動へと繋がり、自分自身を作り上げていきます。ネガティブな考えに偏りがちな人は、ぜひ認知療法を参考にモノの見方を変えてみてくださいね。
編集:COCOLOLO ライフ magazine 編集部