運動と対話型オンラインプログラムが、妊婦と産後ママの主観的健康感の向上に寄与することを確認

認定NPO法人マドレボニータ(東京都渋谷区、共同代表理事 中桐昌子/山本裕子、以下マドレボニータ)は、オンライン型の産後ケアプログラムを開発し、日本体育大学の研究チームが効果測定のための調査研究(研究課題名:コロナ禍における産後女性の心身の健康増進を目的としたオンラインプログラムの効果」)を実施しました。
  • 調査実施の背景  

マドレボニータは、「すべての母が自らの力を発揮できる社会へ」という理念のもと、妊娠期から産後のケアを通じた教室プログラムや企業研修を行う認定NPO法人です。
近年、新型コロナウイルス感染症の影響により、妊娠中〜0歳児をもつ家庭は非常にハイリスクな環境に追い込まれました。本来頼れたはずの実家のサポートや外部サービスの利用が困難な中、産後まもない母親が身体的にも精神的にも不安定な状態で子育てをスタートさせており、産後うつや虐待のリスク、夫婦不和、DVのリスクは平時以上に高まっています。
これを受けてマドレボニータでは、2020年4月に新型コロナウイルス感染症の影響を受ける0歳児家庭の虐待や産後うつ等のリスク軽減のための緊急支援として、急遽オンライン型の産後ケア教室プログラムを開発し、「産前・産後のセルフケア オンライン教室」として、6月に提供をスタートしました。

妊娠中〜0歳児の母子に、2020年6月~2021年3月に延べ1159組へ無料で提供しました(単発レッスン含む)。2021年秋までにさらに約1,000組へ無料提供予定です。
こうした在宅の妊婦や産後女性に向けたオンラインプログラムについては前例が少なく、知見も少ないため、実践しながらその効果を測定し、持続可能な支援の方法を模索する必要があると考えました。そこで、日本体育大学と協働し、コロナ禍における産後1年未満の母親の健康増進を目的としたオンラインプログラムについて精神的・身体的側面から評価することを目的に本調査研究を行いました。その結果、わかったことは以下の通りです。

【1】運動と対話によるオンラインプログラムは、身体症状の改善、主観的健康感の向上、セルフケアの継続、健康への意識や取組の変化など、産後の心身の健康増進に寄与することが明らかとなった。

【2】 COVID-19流行によって出産や産後の生活に何らかの影響があったと回答した産後女性は98.6%に上り、コロナ禍の母親を取り巻く環境の変化の一端も明らかとなった。

【3】 プログラムの長期的な効果の持続には限界があることから、社会的な繋がりや支援を得づらいコロナ禍における産後女性の孤立や健康問題の予防のため、継続的にプログラムを享受できる仕組みが望まれる。

  • 調査結果詳細 

【1】身体症状 :慢性的な疲労、肩こり、腰痛の改善につながった

受講前と比べて受講後に変化がみられた身体症状として、「慢性的な疲労を感じる」 「肩がこる」 「腰が痛い」の3つがあげられます。

「慢性的な疲労を感じる」 について、「非常によくあてはまる」と答えた人が受講前は18%でした。受講直後は23%と微増したものの、1か月後は4%まで減少し、3か月後は23%に戻っていました。
「肩がこる」については、「非常によくあてはまる」と答えた人が受講前は48%いましたが、受講直後は37%、さらに1か月後は17%、3か月後は15%まで減少しました。

「腰が痛い」については、「非常によくあてはまる」と答えた人が受講前は27%いましたが、受講直後は24%、1か月後は13%に減っていました。

表1 身体症状の受講前、受講直後、1か月後、3か月後の回答結果

図1 身体症状の受講前、受講直後、1か月後、3か月後の回答結果

【2】主観的健康感 「こころの状態」:陽性感情が高まり、陰性感情が低くなった

受講前~3か月後の長期的な変化がみられた項目として、以下があげられます。

・ポジティブな感情=自信や至福感など
・ネガティブな感情=心のコントロール感、身体的不健康感など

ポジティブな感情は、受講前に比べ、受講直後、1か月後は高く、3か月後に元の水準に戻りました。
ネガティブな感情は、受講前、受講直後、1か月後に比べ、3か月後は低くなり、改善しています。

(※)本調査では主観的健康観の尺度として心の健康自己評価質問紙(The Subjective Well-being Inventory:WHO SUBI)を使用しました。SUBIは、主観的健康観を構成する陽性感情、陰性感情の2つの尺度から構成され、心の健康状態はもちろん、人間関係や身体の健康感など、精神生活を総合的に評価できる自己記入式の質問紙です。

図2 主観的健康感の陽性感情,陰性感情の平均値の推移 **:p < 0.01, Bonferroniの多重比較

【3】セルフケアの行動変容:セルフケアの実施頻度が増えた
セルフケアの実施頻度として、受講前に比べ、受講直後および1か月後はセルフケアを行う頻度が増えていることがわかりました。

図3 セルフケアの実施頻度の受講前、受講直後、1か月後、3か月後の回答結果

 

【調査方法】
「webアンケート調査によるオンラインプログラムの効果」
• 産後セルフケアオンライン教室に参加する産後1年未満の女性142人の中から、4回のプログラムと4回のアンケート調査を完遂した71人を対象とした。
• プログラムはオンラインビデオ会議システムを介して週1回75分、4回行い、ストレッチ・筋力トレーニング・参加者間の対話・セルフケア実践で構成された。
• 評価指標として、身体症状、セルフケアの行動変容、心の健康自己評価質問紙(The Subjective Well-being Inventory:WHO SUBI)に関する23項目を設定した。
• 受講前、受講直後、1か月、3か月の計4回にわたってWebアンケート調査を行い、各指標の時間経過にともなう変化について統計学的検討を行った。

  • 「コロナ禍のオンライン産後ケアプログラムの効果」調査研究報告会@オンラインのご案内

より詳細なご報告は、オンライン報告会にて行います。

■日時:2021年7月28日(水)15時00分〜16時00分(Zoomにて)

■内容:
・マドレボニータの活動、オンライン産後ケアプログラム、調査の背景、今後の活動について
(NPO法人マドレボニータ 共同代表理事 中桐 昌子)
・研究報告
「コロナ禍における産後女性の心身の健康増進を目的としたオンラインプログラムの効果」
(日本体育大学体育科学研究科助教,博士(スポーツ科学)野村由実氏 / 大阪行岡医療大学助教、理学療法士、博士(医学)荒木智子氏)
・質疑応答

■参加費:無料

【本資料・データの使用・掲載について】
本資料・データを使⽤・掲載される際には、必ず下記の出典を明記してください。
「野村由実、荒木智子、吉岡マコ、杉田正明:コロナ禍における産後女性の心身の健康支援を目的としたオンラインプログラムの効果(第 1 報).女性心身医学,第26巻2号,2021(in press (2021年11月掲載予定))」
■認定NPO法人マドレボニータについて
マドレボニータは、「産後を起点とする社会問題の解決」を目指し、1998年より産前・産後のヘルスケアプログラムの開発・研究・普及に尽力してきたNPO法人です。全国約60箇所で「マドレボニータの産後ケア教室」を開催してきました。2015年より法人向けに「復職支援プログラム」も提供しています。昨年からは新型コロナウイルスの影響により外出が難しい状況下においても、産前・産後の精神的・身体的ケアを届ける方法はないかと試行錯誤を重ね、オンラインでの産後セルフケア教室を開発、展開しています。

代表者:   中桐 昌子、山本 裕子(共同代表理事)
所在地:   東京都渋谷区恵比寿1-15-9 シルク恵比寿403
創 立:    1998年9月3日
法人設立: 2008年2月29日(認定取得: 2017年11月16日)
事業内容: 産後ケア教室の開催、指導者の養成・認定、産後に関する調査・啓発
URL  : https://www.madrebonita.com/

- 本件に関するお問い合わせ先 -
認定NPO法人マドレボニータ 事務局 野田・井端
MAIL: info@madrebonita.com
URL:  https://www.madrebonita.com

本報告会は日本財団の助成を受けて実施しています

 

 


 

掲載元:PR TIMES

Selected by COCOLOLO ライフ magazine 編集部