自分を愛し、他人を愛するツールとして。コミュニケーションをとるのが苦手な人に是非知ってほしい。 笑い文字創始者 廣江まさみさん 後篇


笑い文字があることで、患者さんや家族まで救われる

編集部:前回、笑い文字の魅力についてお話を伺ってその奥深さを知ったのですが、実際にどのような方がどんなふうに活用されているか教えて下さい。

廣江:介護士さんや福祉医療関係の方が結構習って下さいます。
高齢者施設や病院のリハビリの廊下などで、笑い文字の顔に「がんばって」とか「あと1歩」と書かれたものが貼ってあると、一人で辛い思いをしていても、「みんなが応援してくれているんだ!」と脳はいいように誤解してくれます。
入院している方が部屋中にこの顔を貼っていると、看護師さんが「この部屋に来ると癒されるわ~」と仰るという話も聞いています。

 

編集部:殺風景になりがちな施設や病院で活躍しているのですね。

廣江:あとは、お医者さんが書かれたケースでは、「これのお蔭で母は最後までがんばれました」と患者さんの家族が仰ったそうです。お医者さんはお医者さんで苦悩しています。自分の患者さんがもう先があまり長くないとか、検査結果で落ち込んだ時など、データを説明すること以外に医者が出来ることは何だろうか?と。
笑い文字をササッと書いて「お饅頭はもうちょっとがまん」とか書いて渡すことができるだけで、先生本人が書くことにかけた時間以上に、患者さんもその家族もみんながすごく救われるのです。

 

 

最期のお別れのシーンで「ありがとう」を伝えられたらラクになれる

編集部:それでは、廣江さんが笑い文字をもっと使ってほしいと思うシーンはありますか?

廣江:それは死の場です。実は、3番目に講師になろうと思ってくれた方が、ある年の12月に受講して翌年の4月にがんで亡くなってしまったのですが、その方のご葬儀の会場に参列したら棺の中も外も笑い文字だらけだったのです。その方から習ってお別れに来た生徒さんたちが、その場で笑い文字で「ありがとう」を書いて入れて行かれたんですね。
その光景を見て、最期のお別れに「ありがとう」を伝える、こんなすごいコミュニケーションツールはないなと思いました。実際、この出来事に感銘して協会を作ろうと決心しました。

 

編集部:素敵なお話ですね。

廣江:私たちって死の瞬間に渡せるものを持っていないんだということに気づきました。でも、自分の思いが渡せたら、思い残しがなくなるんですよね。こんなことをしてあげればよかったとか、いろいろ思うといつまでもクヨクヨしたり引きずったりもします。最後に「ありがとう」とか「感謝してるよ」を渡せたら、きちんと終わることができてすごく救われると思います。
最期の「ありがとう」はふつうのありがとうとは深みが違いますからね。笑い文字を習った方は50代の方が多いので、実際に棺に入れてお見送りしたという方は結構いらっしゃいますよ。

 

 

満ちた顔が万人を受容する

編集部:シンプルで温かみがあって、誰でも書くことができるからこそいろいろなシーンで使えるのでしょうね。

廣江:そうですね。字や絵が苦手な方でも書けるように、バランスや書き方はすごく工夫しました。私は笑い文字の顔は受容している顔だと思っています。満ちた顔です。知らない人はかわいい顔を書きたいと言って習いにいらっしゃいますが、私は満ちた顔を書くんだとお話します。
赤ちゃんはまだ視力が十分でないときから、大人を見て、この人は自分の世話をしてくれる人かどうか、信頼出来る人かどうかを目と口の二つの線だけで見分けると言われています。受容してくれる笑い文字の顔は、輪郭も丸、目と口をつないでも丸。鼻も半円、ほっぺも丸です。笑い文字の顔には丸しかないんです。文字を書くときも角を作らず丸く書いて、その囲み顔を入れていきます。

今年は海外での講習も増えるのですが、笑い顔というのは世界共通ですし、thank you とかhappyとか、基本のルールを守ることで何語でも展開できます。この満ちた顔は老若男女、世界中の人を受容できると思っています。

 

 

コミュニケーションをとるのが苦手な人に是非身につけてほしい

編集部:笑い文字の奥の深さに改めて驚きました。それでは最後に今年いちばん力を入れたいことを教えて下さい。

廣江:協会設立以来「書いて半分、渡して完成」を目指していますが、今までどちらかというと書くことに寄っていて、書いた状態からどうするというところがまだあまり出来ていないので、コミュニケーションツールとして考えるというところを強化したいと思っています。

 

編集部:新しいメニューなどあるのでしょうか。

廣江:はい。今年、ありがとうの顔や文字に朱色が入っていない状態からはじめるワークをリリースします。
笑い文字では「あ」と「う」の丸の囲みの中に顔を書くのですが、「あ」の顔を自分、もう一つの「う」の顔を贈る相手だと思って書いていくワークです。
簡単に説明しますと、まず自分の顔に朱色でほっぺを入れます。ほっぺは、その人のポジションを表現するのです。例えば癌のサバイバーの方々に研修した時は、みなさんほっぺを小さく書かれました。そこで、絵が自分とリンクしていると思ってほっぺを大きく描こう!と言って書き続けていると実際に書いている人たちの体温が高くなることがありました。
また、「自分は誰かの引き立て役でいいや」と思ってしまう人、いつも誰かを引き立てる私みたいな位置に自分を持っていく人っていますよね。そういう人はほっぺを小さく平たく書きます。そんな人には、「ほっぺを大きく描こう」「もっともっとって大きく」といってワークを進めていくと、次第に自分を前に出していけるようになっていきます。
そして、相手に見立てた「う」の上の点を同じく朱色を使ってハート(♡)で書くのですが、そのときは自分が出すハートだと思って書くのです。相手に届けるよう愛を込めて書きます。

編集部:自分と向き合うと同時に相手のことも思うワークで、前回仰っていた自己肯定感にもつながりますね。

廣江:そうですね。今後笑い文字を知って欲しい人は?と問われたら、コミュニケーションをとるのが苦手な人ですね。「もう少しコミュニケーションがとれたらもっと人生変わるのに、、、でもどうしていいかわからないな」と思っているような方に、是非笑い文字を身につけてほしいと思います。これからもいろいろな方法で、笑い文字を広めていきたいです。

編集部:たくさんのエピソードも交えたお話、どうもありがとうございました。

 

「こころトーク」を笑い文字で書いていただきました!

 


廣江 まさみ(ひろえ まさみ) MASAMI HIROE

笑い文字創始者 一般社団法人笑い文字普及協会代表理事
「笑い文字」は満面の笑顔で構成された筆文字。2014年に笑い文字普及協会を設立し、「感謝と喜びの循環する世界を作る」を理念に、誰でも書いて渡せる筆文字コミュニケーションを普及する。本人の笑顔も笑い文字に似ている。「協会アワード2018」において文部科学大臣賞受賞。主婦層から企業研修まで講座受講者3万人。日本郵便切手多数制作『遠慮なく幸せになればいい』(かんき出版)はじめ著書4冊


編集:COCOLOLO ライフ magazine 編集部


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