笑い文字は、かわいいだけじゃなくて人生に寄り添ってくれるのです。 笑い文字創始者 廣江まさみさん 前篇

今回の「こころトーク」は、笑い文字創設者で普及協会の代表でもある廣江まさみさん。笑い文字の色は白・黒・朱のみ。シンプルで少し習うだけで誰もが書けるのに、あらゆるシーンで力を発揮する奥の深いコミュニケーションツールなのです。

実際に笑い文字を目の前にしながら、ご本人のほんわかした語り口に、インタビューはまさに受容されるここちよさで満たされました。笑い文字って何?からその活用のされ方まで前篇、後篇2回に渡ってお届けします。


 

字や絵が下手でも大丈夫!サインから生まれた笑い文字

編集部:笑い文字はとても独自性がありますね。どうして笑い文字を開発されたのですか?

廣江:もともと笑いヨガをやっていて、笑いヨガの本を共著で出したのです。本を出すとサインをする機会ができるわけですが、私は字が下手なので笑った顔があればいいかなと思ってマジックで顔を書いてサインをしたのです。そのうち、会場で筆ペンを用意して下さって、それで笑い文字のサインを書いたらなんかすごくいい感じに仕上がりまして。
そんなことをしているうちに、笑いヨガ関係の人や、知り合いの方で書いてほしいという声があがり、「いつも簡単そうに書いていていいね、教えて~」という人たちが現れ、さらに自分で教えたいという人が現れ…そうやって笑い文字は生まれました。

 

もらった人の喜びようを見て、自己肯定感があがる

編集部:そもそも、みなさんなぜ笑い文字を習いたいと思われるのでしょうか?

廣江:まずは、見てかわいいと思ったからという方が多いです。また、この笑い文字はコミュニケーションツールに使えるのが魅力です。絵でも習字でも習ったらそれで満足しますが、笑い文字は「書いて半分、渡して完成」で、相手に渡してこそ成立するのです。
私は、いつもオリジナルのはがきと筆ペンを持ち歩いて、カフェでお茶をしても、タクシーに乗っても、人に会っても、とにかくいつでもどこでも誰にでも書いていますよ。
例えば、お気に入りのカレー屋さんに10年通っていても、わざわざ「ありがとう」って書いて残す人っていないですよね?だから、書いて渡すとものすごく喜ばれます。
相手からの反応が想像を超えるぐらい大きいんです。

 

編集部:人から喜んでもらえるってうれしいですよね!

廣江:人ってみんな喜んでもらうことが大好きなんです。「自分は大したこと出来ない」とか、「自分がしたことくらいでは喜んでもらえない」と思い込んでいるから行動を起こさないだけなのです。でも、この笑い文字を渡すと「こんなに喜んでもらえるんだ!」って実感できます。「私のしたほんのちょっとしたことでこんなに喜んでもらえるんだ」という「自己肯定感」が上がります。

 

 

自分の生きている時間を使った「手書き」を贈ることに意味がある

編集部:先ほど、コミュニケーションツールと仰いましたが、SNSやメールのコミュニケーションが日常茶飯になっている昨今をどう思われますか?

廣江:コミュニケーションをとる機会は増えて一見密になっているのでしょうね。でもSNSやメールは画面を閉じたらおしまいだけれど、笑い文字はあとあとずっと生きているコミュニケーションというところが大きな違いでしょうか。

 

編集部:こだわっていることはありますか?

廣江:手書きにこだわっています。印刷で複製するのはダメと決めています。なぜかというと、手書きは書いている間、自分が生きている時間を使っています。プリンターに任せてしまうと掃除しながらでも大量に印刷してくれますが、そこに私の時間は使われていないのです。
手書きは、たとえその1枚に費やす時間は1分でも2分でも、私の命の時間を注いでいることだから、結果的に出来上がった笑い文字は、私をそのまま相手に渡すことにつながると思っています。

 

 

無心になって書いている時間は瞑想に似ているかも

編集部:ストレスを抱えている人に対して、笑い文字の効用のようなものはありますか?

廣江:とにかく笑顔しか書かないので、書いている間その人自身が癒されるということでしょうか。みなさん無心で書きいていて、よく「写経のようだ」とおっしゃいますね。そして何枚も書いているうちに「すっきりしちゃった」というケースが多いです。
写経は書いたら終わりですが、これは書いたら誰かに渡さなきゃいけないルールがあるわけですから、例えとっかかりは自分のために書いた「ありがとう」であっても、それが誰かにとっては支えになることもある。それもいい点でしょうね。

 

編集部:やはり誰かを思って書く方がいいですか?

廣江:ええ、私はいつも誰かを思って書いていますね。「ありがとう」を書いている間は、ずっと「ありがとう」と思いながら書いています。そして他のことは考えていないです。最近は瞑想する人も増えているようですが、一つのことに集中するという意味で瞑想に近い感覚なのだと思います。

 

 

笑い文字を使って対話するとラクに「内観」ができてしまう

編集部:他にも笑い文字でできることはありますか?

廣江:笑い文字を使うと「内観」もできます。
自分が書いた笑い文字の顔を見ながら、「本当は、どうしたいの?」と自分と対話するのです。自分の中に問題を抱えている時は、人からいろいろアドバイスをもらうこともできますが、結局答えは自分の中からしか出てきません。笑った顔は絶対拒否しませんからね。

 

 

編集部:確かにこの顔には拒否されない気がします。

廣江:ふだん「○○が憎い!」と思うと、「あ、、ダメダメ。そんなこと思っちゃダメ!」というふうに自分の心の中の浅いところでジャッジをして心に蓋をしてしまうのです。だから本当の気持ち、心の深いところに到達できないのです。
でも、この笑った顔が「憎いと思ってるんだ、ふ~ん」と受け止めてくれると、そのうち「でも、ちょっと待ってよ...。本当は憎いと思っているのじゃなくてね...」と、次第に自分の心の深いところに近づけます。心の表面から深いところまでスッと入っていけるんです。
このワークを進めると、面白いほどに最後はみなさん「本当は愛だったんだ…」みたいなところに行き着きますよ。これは本当に面白いですね。ラクに内観ができるからストレスを抱える人には身につけてほしいです。

 

編集部:外向きだけじゃなくて自分自身とのコミュニケーションツールにもなるのですね。

廣江:そうです。もちろん外とのコミュニケーションも大事ですが、いちばんコミュニケーションをとって仲良くならないといけないのは、本当は自分自身なんですよね。

 

後篇に続く


廣江 まさみ(ひろえ まさみ) MASAMI HIROE

笑い文字創始者 一般社団法人笑い文字普及協会代表理事
「笑い文字」は満面の笑顔で構成された筆文字。2014年に笑い文字普及協会を設立し、「感謝と喜びの循環する世界を作る」を理念に、誰でも書いて渡せる筆文字コミュニケーションを普及する。本人の笑顔も笑い文字に似ている。「協会アワード2018」において文部科学大臣賞受賞。主婦層から企業研修まで講座受講者3万人。日本郵便切手多数制作『遠慮なく幸せになればいい』(かんき出版)はじめ著書4冊


編集:COCOLOLO ライフ magazine 編集部

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