自分の感情とのつき合い方がわかると、子育てがラクになります。 カウンセラー・コーチ 久保木惠子さん 前篇


今回の「こころトーク」のゲストは、カウンセラー、コーチとして主に乳幼児を持つ母親の心に寄り添う久保木惠子さん。ご自身も3歳児の子育て真っただ中です。

約15年間不動産業界で営業職やアセットマネジメント職のキャリアを積んだものの、いざ子育てとなると、そこに必要なのは仕事で磨いたスキルとはまるで異なることに愕然としたそうです。そのような中で、カウンセラーとして自身の心を見るトレーニングを積んでいたことが子育てを随分とラクにすることを実感、子どもを目の前にスタートラインで苦しむ母親の気持ちをサポートすることに全力を傾けます。

コラムやブログを通した情報発信にも力を入れる久保木さんならではの、小児精神科医のエピソード紹介なども交えた幅広いお話をうかがいました。子どもと向き合うことは結局のところ自分の心と向き合うこと。
子育て期はもちろんのこと、私たちが日々人と上手に関わっていくためにとても役立つお話です。前篇、後篇2回に渡ってお届けします。


自身の子育てで目の当たりにした、仕事と子育てで求められるスキルは真逆という事実

編集部:久保木さんは現在、乳幼児の母親向けにカウンセリングやコーチングをされていますが、それにはご自身も子育ての最中であることが影響しているのでしょうか?

久保木:子どもを産む前から数年間、女性に向けたカウンセリングを行っていましたが、やはり、私自身が子どもを産んで「育児ってこんなに大変なんだ・・・」と身をもって経験したことが大きいです。

今、子育てのスタートラインでお母さんが疲労しているケースがとても多いです。保育のプロと言われる方々も口を揃えて仰いますが、乳幼児というのは自我が発達して子育ての中でも一番大変な時期です。それでいて母親も赤ちゃんもお互い新米同志ですから、それはもう疲れて当然なのです。
でも多くのお母さんにとって、カウンセリングを受けるということはとても勇気がいることだと思うのです。ですから、お母さんたちの気持ちが少しでもラクになってもらえるよう、コラムやブログでの情報発信も積極的に行っています。

 

編集部:ご自身は不動産営業という厳しい世界でキャリアを積まれていますが、お仕事の大変さと子育ての大変さは何が違うと実感されましたか?

久保木:仕事に必要なスキルと子育てに必要なスキルは真逆だと痛感しました。
仕事では目的を設定して、ノルマを達成するために自分でガツガツ働いて、でもちょっとキツいなと思ったら休んだりして自分主体でコントロールすることができました。でも子どもは自分の思ったように動いてくれません。早く寝てほしいからササッとご飯を済ませたいと思っても、子どもはこちらの思い通りには動いてくれませんよね。

 

編集部:子育てはアンコントローラブルということですね。

久保木:その通りです。結局、子育ては、仕事で使い慣れていたゴール設定してそれを着実にクリアしていくというゴールシンキングではなく、ありのままの子どもの感情を受け止めて共感していく作業であることに気づきました。

 

 

結局は自分の心とのつき合い方。それがわかってくると子育てはラクになる

編集部:日々の子育てに追われていると、なかなか子どもの心の中をみる余裕は持ちづらいですよね。

久保木:子どもの心の中をみていく作業は、まずは自分の心をみることから始まります。私の場合、カウンセリングやコーチングの勉強をしてきたので、自分の感情とのつき合い方がわかっていましたから、それが相当子育てを随分ラクちんにしていると思います。

 

編集部:多くのお母さんは、慣れない子育ての中で冷静に自分の心と向き合えないと思うのですが、心がこんなふうになったら要注意というわかりやすいサインのようなものはありますか?

久保木:なにをどう感じるか、その程度は人それぞれなのですが、私の経験から言えることとしては、

  • 子どもに対してイライラが止まらなくなった
  • 子どもがかわいいと思えなくなった
  • 子育てが辛い

そんな気持ちが強くなったら注意が必要だと思います。

一般的に、お母さんたちは「子どもがかわいくない」なんて口が裂けても言えません。そんなことを言ったら「愛情が薄い」とか「ダメな母親」とか言われるのが怖いですから。でも、心の中には光もあれば当然闇もあります。気持ちの闇の部分は決して抑え込まなくていい、むしろ大切な部分でもあるのです。

 

イライラは抑え込むと不発弾に。「あ~、私、今すごくイライラしているんだ。」と自分の心にベクトルを向けて適切に処理すればいい

編集部:それでは、久保木さんご自身はお子さんを育てる中でイライラしたりすることはありますか?

久保木:多分に私の性格が関係しているのですが、私は子どもを人に預けて見てもらうということが苦手で、何でも自分で抱え込む傾向があります。そうするとどうしても二人でいる時間が長くなって子どもは私にベッタリです。ですからちょっとしたことでイライラしてしまうのが現実です。

 

編集部:そのイライラした気持ちに対して、どうされるのですか?

久保木:よくイライラしたら深呼吸をして・・・などと言いますが、個人的にはこの方法はあまり上手くいきませんでした。
私の場合は、自分の心にベクトルを向けて、とにかく感情を無理に抑え込まないようにしています。

感情の矛先を子どもではなくその時の自分の心へ向けるのです。例えば、「あ~私、すごくイライラしているんだ。でも、仕方ないよね。いくらかわいいわが子とはいえ、これもイヤ、あれもイヤと朝から否定ばかりされているんだから、そりゃ疲れるよ・・・・・」という具合です。イライラする気持ちは抑え込もうとすると余計イライラします。でも、矛先を自分の心へ向けると、やがて気持ちが凪(ナギ)になって、「あ~、あの時は時化(シケ)てたよな~」と振り返ることができます。

冷静になってよくよく考えると、子どもにイライラしていたのではなくて、もともと私自身がイライラしていたから、子どものちょっとした言動に触発されて、子どもにイライラしたんだな、と気づきます。そうすると子どもに対して、「あ、あれは八つ当たりだったね、ごめんなさい」と思えるわけです。自分の心と向き合って自分の気持ちをフィードバックすることはよい方法だと思います。

 

編集部:そうやっていると、心が時化(シケ)るタイミングやパターンもわかってきますか?

久保木:そうですね。私の場合は、

  • 時間がないとき
  • 自分一人で子育てをやっているとき(夫が不在のとき)
  • 夫の夜の帰宅が遅いとき

このような時に心が時化(シケ)る傾向があることがわかります。

イライラは私の手の中で爆発する分にはいいのですが、下手に抑え込んで不発弾のようになると何でもない時に爆発します。イライラは決して悪いものではなくて、適切に処理することが大切なのです。

 

 

相手を非難しない「アイメッセージ」もおすすめ

編集部:ご主人の話がでました。初めての子どもの場合、それまでの大人二人の生活に赤ちゃんが加わってがらりと家庭内の環境も変わりますが、そういう時だからこそのコミュニケーション法などはありますか?

久保木:子育てが辛くてカウンセリングにいらっしゃる方の中には、「主人に育児の大変さが理解されない」「日中は一人で育児をしており孤独が辛い」と言う方もいます。互いにLINEやメールで連絡を取り合って対面でのコミュニケーションが少なくなっているお話も耳にします。

 

編集部:自身を振り返っても、ゆっくり会話する心の余裕もなく、言葉がきつくなってしまったり、どうせ言ってもわからないだろう、、と話すことが面倒になった記憶があります。

久保木:産後クライシスという言葉もあります。始めての子育ては右も左もわからずとまどうことばかり、しかも小さくてふにゃふにゃの赤ちゃんは、かわいいと同時にとても怖かったです。子どもが低月齢の時は特に、「死なせたらいけない」と必死でした。
お布団が顔にかかっていないかな、ちゃんと息をしているかな、暑くないかな、寒くないかな、風邪をひいていないかな、お腹はすいていないかな、と寝ても覚めても赤ちゃんの心配ばかりしていました。
そんな中、毎日外から帰宅する夫がバイ菌を持ち返ってくる人にしか思えなくなった時があり、その時は私も夫に対してとてもイライラしました。

でも、心理学においては「怒りは二次感情」と言われます。よくよく考えると、そのイライラは私がわが子を守りたい愛情が根底にあってのことで、別に夫が嫌いなわけじゃないんだな、という真意に気づくと気持ちが変わってきました。

あと、もう一つ心がけたのは「アイメッセージ」です。
話すときに主語を「私=I(アイ)」にするのです。喧嘩するときはどうしても、「またあなたはこんなことして!」と相手を非難するモードになってしまいますが、例えば、夫が洗濯物を脱ぎっぱなしにしてイラッとした時に、「こんな風にされると、私は大変でイヤだからやめて」と自分の感情や気持ちを相手に伝えるのです。これだと相手は非難されたり命令されているようには受け取らないので、素直に話を聞いてくれます。

 

編集部:アイメッセージは確かにうまくいくような気がします。

久保木:お母さんにお伝えしたいのは、まずは自分の感情を見つめてそのつき合い方を知ることです。自分の心とのつき合い方がわかると、相手を思いやる余裕が生まれます。自分も、子どもも、そして夫も、、、。みんながラクになれる三方よしにつながります。

 

後篇に続く

 


久保木 惠子(くぼき けいこ) KEIKO KUBOKI

ライフスタイルが大きく変わる妊娠出産・育児期の女性の心のケアを専門に、相談者に寄り添うコーチングやカウンセリング、執筆活動を行っている。
育児中のイライラや孤独感、母親としての責任感や罪悪感に苦しむ方々の気持ちを少しでも楽にすることが目標。プライベートでは自身も乳幼児の母親であり、子育て真最中。
1996年に明治大学卒業後、不動産業界で営業やアセットマネジメントに約15年間従事し、コーチとして独立。JCELA認定コーチ。女性専用の電話相談「ボイスマルシェ」専門カウンセラーとしても活躍中。


編集:COCOLOLO ライフ magazine 編集部