メンタル不全は誰にでも起こりうる。「〇〇すぎる社長や上司」は危険信号 ライフバランスマネジメント研究所 代表 渡部卓さん Vol.4


現代社会はストレスとの闘いです。「こころを整える」ためにどうすればいいのか、各界の著名人をゲストに招いてCOCOLOLOライフmagazine編集部がメンタル面の変化に着目しながら切り込んでいく「こころトーク」。

今回のゲストは、豊富な職場とマネジメント経験をもとに、現代職場特有の問題と改善対策など難解なテーマに対し、専門用語を使わずに数多くの講演・ワークショップをされている渡部卓さんです。組織におけるメンタル不全の実情についてお聞きしました。

 

メンタル不全は誰にでも起こりうる

編集部:働く人のメンタルヘルス対策が企業にも求められていると思いますが、メンタル不全を訴えられる方はどのような方なのでしょうか?

渡部:本当に精神科の専門医による手厚い診療が必要なケースは、働くひとの一割もないのではないでしょうか。ただ日常的に不安やうつを感じる働くひとは過半数を超えますし、メンタル不全はいつ誰にでも起こりえます。逆にうつなど経験したことないと豪語する人のほうが私からみると心配な面が多くあります。気持ちのブレは誰にでもあるものなので、ふり幅を一定範囲にコントロールできるかどうかが大事だと思います。

 

編集部:本当にどっちにふれすぎてもという部分がありますよね。例えば大きな仕事の案件が取れて大喜びしたものの、その後うまくいかなくて立ち直れなくなるようなことも。

渡部:ほめたり持ち上げたりが好きな社長さんもいるのですが、自分のペースで落ち着いて仕事をしたい社員にとっては逆にストレスに感じたりすることもありますね。経営者が自分の方へ引っ張っていこうとする中で会社自体がおかしくなっていくケースがあります。イケイケドンドンという雰囲気ですね。
逆に、ちょっと心配性だったり鬱っぽいくらいの社長の方が会社が上手くいっていたりします。弱い人の気持ちが分かりケアができるのですね。恥ずかしくて言えないような失敗話なども披露する等身大でいようとする社長やリーダーがいる職場はメンタルの状態が悪くないとの調査もあります。

 

 

「元気すぎる」社長や上司はご注意を

渡部:「社長が元気すぎる会社にはうつの社員が多い」これはメンタルヘルスの専門家やカウンセラー、人事や労務スタッフの間では半ば常識となっている事実です。
もちろん、社長がいつも暗い顔をしていたり、病弱で覇気がなかったりすれば社員も不安になって仕事の士気も上がらないのは言うまでもありません。いつも元気で前向きだというのは社長の条件のひとつだといってもいいくらいです。
ただ、問題は「元気すぎる」ということです。
元気すぎるということは、要するにその社長は普段ほとんどストレスを感じない、ストレス耐性の強い人だということです。そういう社長は時として、ストレスにさらされて苦しんでいる社員・部下がいてもなかなか気づくことができないことも多いのです。

 

 

大体社長や上に立つ人というのはどこの会社でも並外れてタフだと相場が決まっていて、そういう人は社員や部下がストレスからうつ病になったと聞いてもそれは本人の性格や個人の問題と決めつけてしまうことが多いです。
社長が無関心のままでは、その企業のメンタルヘルス対策、そしてその先の力強いメンタルタフ経営の展開には進みません。社員がストレスを溜め込まず心身を健康に、ワークライフバランスを維持しながら生きがいをもって働けるかどうかは、社長の責任さらに企業の社会的責任だといっても過言ではないと思っています。
メンタル不全は個人の特殊な問題というより、すでに社会問題として看過できないところまできていると思います。自分でどうにかしようにも普通のビジネスマンにはその術がないのです。社員が心身ともに健康で生きがいをもちながら働ける職場環境とは何か。どうすればそれを実現できるのか。私はそういう問いに対して自らの手で答えを出すということをライフワークとして課しており、これからも取り組んでいきたいですね。

 

“健康的に生きがいをもって働ける社会の実現”にむけて取り組むことをライフワークだと語る渡部さんからは、働くひとへの熱いエールが溢れていました。
話題の書籍となった渡部さんご自身の著書である「人が集まる職場人が逃げる職場」(クロスメディアパブリッシング刊)も是非あわせてご一読いただければと思います。
自分自身がメンバーを率いる立場であるとき、自分のペースで突っ走っていないか、メンバーのストレスに心を配れているかという意識を忘れずに心がけていきたいですね。

 


渡部 卓(わたなべ たかし)

帝京平成大学現代ライフ学部教授、ライフバランスマネジメント研究所代表、産業カウンセラー、エグゼクティブ・コーチ
グローバル企業からベンチャー企業まで、豊富な職場とマネジメント経験をもとに、職場のメンタルヘルス対策、ワークライフコーチングの第一人者として、講演、企業研修、教育分野、マスコミでの実績は海外も含めて多数に上る。著書に『折れない心をつくる シンプルな習慣』、『明日に疲れを持ち越さないプロフェッショナルの仕事術』、『人が集まる職場 人が逃げる職場』などがある。


編集:COCOLOLO ライフ magazine 編集部


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