スランプに陥った選手たちを立ち上がらせた意外な方法とは?スポーツメンタルコーチ・鈴木颯人さん


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現代はストレス社会と言われますが、適度なストレスはヒトの成長に欠かせません。日々「こころを整える」ためにどうすればいいのか、COCOLOLOライフmagazine編集部が様々な分野で活躍する人物からそのヒントを探る「こころトーク」。

今回も前回に続き、数々のアスリートのパフォーマンスをコーチングによって激変させてきた、スポーツメンタルコーチ・鈴木颯人さんにお話を伺いました。COCOLOLOライフmagazine編集部の板生研一(WINフロンティア㈱代表・医学博士)との対談形式で、スランプに陥った選手たちを立ち上がらせた、意外な方法を語って頂きます。

 

選手がコーチングを始めるきっかけ

編集部:そもそも、選手がコーチングを始めるきっかけについてお聞かせください。鈴木さんの著書の中では、色々な選手との事例が書かれています。スランプに陥った状態の選手から電話で問い合わせがあり、まずは1回セッションをやられるという例がいくつか書かれていましたが、そのような流れで始まることが多いのですか?

鈴木:そうですね。基本的にはうまくいっていない選手しか来ないですね。うまくいっている選手はほとんど来ない。まれに来ますけど、うまく行き過ぎている子は、滅多に来ないですね。

 

 

編集部:本来実力があるけれど、一時的に能力が下がっているだけというケースが多いのですか?それとも、そもそもメンタルを気にする以前に実力が伴ってないというケースもあったりしますか?

鈴木:あります(笑)。ただ、面白いことに、実力が伴っていないんだけど、メンタルが変わって覚醒する子とかもいるんですよ、実際に。

 

編集部:なるほど、面白いですよね。やっぱり、心と体が一体ということなのでしょうか。

鈴木:そうですね。ある中学生の男の子なんか、もう野球を辞めようとしていて僕のコーチングを半年間受けたんですよ。野球を辞めようとしていた時には、一軍にすら入れなかった。中学生野球なのに、同じ学年に部員が、40~50人いるんですよ。

本人は、「やぁ~、本当にやばい状況なんです。」と言っていたのが、2ヶ月で一軍に上がって、3ヶ月で試合にちょこちょこ出られるようになって、4カ月でレギュラーになって、5カ月目には、もう中軸を打つようになったんです!

更にすごかったのは、中三になった年に、確か8校くらいからスポーツ推薦のオファーが来たんですよ。少し前までは、「辞めようかな」って言ってたのに(笑)。半年でスポ薦8校以上って、ちょっと想像以上でしたね。

 

編集部:すごい!その人はやっぱり「思い込み」がそのフタをしていたってことですか?

鈴木:そうですね。彼は身長が低いことを気にしており、「少し無理かな」と自分で言っていました。元々、下手ではないんですけど、打てなかったことを引きずりすぎちゃう癖がありました。「自分はダメだ」ってなりすぎちゃった訳ですね。

 

編集部:それは、重要な試合で打てなかったような経験が、ちょっとトラウマになっているイメージですか?

鈴木:確かそんな感じでしたね。彼は二軍だったんですけど、実はその前は飛び級で、その1学年上の試合に出ていたんですよ。

 

編集部:なるほど。基本的な実力はやっぱりそこそこあって、ちょっとスランプ状態に陥っていたような感じですかね?

鈴木:まぁそうですね。一番の原因は、監督・コーチの目線が気になりすぎてしまったことですね。そのプレッシャーに負けてしまい、信頼を掴めず、二軍に落ちてしまったのです。だから、監督を目の前にすると、いい結果を出せないという悪循環でしたね。

 

先入観を持たず「思い込み」に気づかせる

編集部:それは、どうやって変わったのですか?面白い話なので、ぜひ聞きたいですね。どうやると監督の目は気にならなくなるのでしょうか?

鈴木:結局、彼は、監督に言われたある言葉をずっと引きずっていたんです。

「お前、オドオドしすぎなんだよ」って。本人は、オドオドしているつもりはないんですよ。でも、そう言われてから、「俺、オドオドしているんだ」って思い込んでいたんですよね。

僕は彼とはSkypeを通じてずっとやりとりしていたのですが、どうやら彼は、「オドオドしているように見えてしまっているだけなんだ」ということに、僕の方が気づいたのです。

じゃあ、それを彼に伝えたら、彼は変われるんじゃないかと僕は思いました。ただ、普通に伝えたのでは面白くないので、iPhoneを持って、僕が画面に対して彼と普通に喋っている時に、密かに彼のしぐさを動画で撮ったんですよ。で、ある程度撮り終わった時に「ちょっと今の会話のやりとりを動画で撮ったから見てくれないか」と伝えて、その動画を見てもらったんです。

そして、「これ見てどう思う?」と彼に聞いたら、「うーん、なんか自分じゃないみたいです。」と彼は言いました。人は、自分のことを分かっているようで、意外と分かっていないんですね。彼はうなずきが人よりもすごく多かったんです。「はい」「はい」って。だから、この挙動がオドオドしているように見えただけなんですよ。

本人は自信をもってやっているつもりでも、自信がなさそうに見えてしまっていた。それが分かって、それを伝えてあげて、気づかせてあげて。そこからやっぱり結果が上がってきたんです。

 

編集部:なるほど…。ちなみに、そのうなずきが多いのを彼は止めるようになったんですか?

鈴木:はい、回数を減らして、深いうなずきをしてもらうようにしたんです。普通の監督さんや親御さんだったら「それやめろ」としか言えないと思いますよ。お前変だぞって言われても、本人が変じゃないって思っていたりするから。

 

 

編集部:そうですよね。でもそうすると、そのアスリート個人によって、気づきのポイントって全く違うわけじゃないですか。これを類型化して、仕事・プロとしてアドバイスし続ける…結構大変ですよね。彼は典型的なこのタイプだから、こう言っておけば大丈夫かな…とか、なかなかそう分類しづらいですよね?

鈴木:そうですね。逆に言えば、自分の中で分類しちゃいけないと思っているんです。分類すると分類した型で相手を見る事しかできないので。そうすると自分の思い込みで相手に接しちゃうので、多分その深いところの気づきっていうものが減っていってしまう・・・。

 

編集部:先入観なく接するということが、基本として大事ということですね?

鈴木:はい、僕はそうやって常に先入観を持たずに仕事をしています。

 

固定観念を持たずに相手に接し、自分自身で「思い込み」に気づかせる。決して一方的でない鈴木さんのメンタル術は、家庭や職場など日常での人との関わり合いの中でも大切にすべき事だと感じさせてくれます。

次回は、スランプからの脱却が早い選手と、崩れやすい選手との差についてお話しいただきます。どうぞお楽しみに!

 


鈴木颯人
スポーツメンタルコーチ

1983年、イギリスに生まれ東京で育つ。
スポーツ推薦で入学した高校時代にプロを目指した野球で挫折。その時の経験をもとに、脳と心の仕組みを学び、勝負所で力を発揮するメソッドを構築。競技・プロアマ・有名無名を問わず、そのコーチングによって数々のアスリートのパフォーマンスを激変させている。著書に「一流をめざすメンタル術」などがある。


編集:COCOLOLO ライフ magazine 編集部


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