セルフコントロールと言葉の力
反応する心と言葉
ちょっと暇な時間ができるとすぐにスマホゲームをしてしまう、アプリからの通知が来ると適切でない時でもすぐに内容をチェックせずにはいられない、アルコールやジャンクフードをついつい過剰に摂取してしまう、他人の一言についカッとなってしまう等、沸き起こる衝動に対して、セルフコントロールを必要とする場面が、私たちの日常生活では多々あります。
神経科学の観点からみると、衝動は、脳の奥深くに位置する大脳辺縁系から生み出される無意識の反応です。それに対して、脳の前方に位置する前頭前皮質(前頭前野)は、大脳辺縁系から送られてきた衝動をよく吟味し、適切な反応になるように調整します。そのおかげで、私たちは衝動をそのまま行動に移してしまうことを防げるのですが、疲れていたりすると、この前頭前皮質によるセルフコントロールに失敗してしまい、衝動のままに暴走してしまうことがあります。
セルフコントロールを効かせ、衝動にうまく対処するには、色々な方法がありますが、非常に簡単な方法として、「言葉の力」を利用する方法があります。
東京大法学部出身で会社員の経験もされた後に、30代半ばで出家されて僧侶になられた草薙龍瞬さんの著書『反応しない練習』はとても興味深い本です。この本では、ブッダの教えとは「心のムダな反応を止めることで、いっさいの悩み・苦しみを抜ける方法」であると書かれています。そして、衝動を含む、心のムダな反応に対処する方法として、「言葉の力」を利用することについて書かれていますので、以下、引用させていただきます。
そして、「心の状態を見る」のに有効な方法の1つとして、「言葉で確認する」という方法があると書かれています。例えば、衝動的にスマホゲームのアプリを起動しようとしている時は、「退屈な心が刺激を求めている」と(実際に心の中で)言って、言葉で確認します。適切でないタイミングで来るアプリからの通知に思わず反応しようとしている時は、「心がざわついて気になって仕方がない」と(実際に心の中で)言って、客観的に確認する感じです。言葉で確認すると、「反応から抜け出すことができる」ので、心は落ち着きを取り戻すようです。
一方で、言葉の使い方を間違えると、逆にセルフコントロールを弱めてしまうこともあるようです。
言葉の力は諸刃の剣
頭の中のひとり言とセルフコントロールの関係について、カナダのトロント大学心理学部のアレクサ・M・タレット博士らは、とても興味深い実験を行いました。
実験では・・・
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【執筆者プロフィール】
板生 研一
WINフロンティア株式会社創業者&CEO / MBA&PhD(医学)/ SONY出身 / 東京成徳大学経営学部特任教授 / メンタル・マネジメント、クリエイティビティ・マネジメント、アントレプレナーシップの研究と実践 / 信頼できるエビデンス(海外学術研究等)に基づき発信 / noteで『起業家兼研究者が考える メンタル・マネジメント法』を連載中