不眠不休!アスリートな「心臓」(後編)

心臓の誤ったケア

これだけ活発な心臓を人生を全うするまでしっかり働いてもらいたいものです。そのためにはケアが必要となります。前述したように、心臓は「筋肉の塊」ですので、使わなければ萎えていきますし、鍛えれば強固になります。そこで鍛える手段として運動やスポーツが該当してくるのです。

昨今では多くの方がマラソンのような持久力を要するスポーツにチャレンジされ、フルマラソンの完走者も多く出ています。ある意味素晴らしい風潮だと思いますが、ここに大きなリスクが潜在しています。

 

運動のメリットとリスク

1.運動へのブランクがあり運動を始めたばかりでの高負荷なスポーツにチャレンジする方

2.スポーツに没頭するあまりストイックにトレーニングをしている方

この両者は特に注意が必要となります。

「1」の方の場合、過去に少しできていたり、はたまた新たな気持ちでチャレンジされることだと思います。兆候としてはとても素晴らしいものです。しかし残念なのは準備不足であることです。関節や筋肉などの活動量不足はそのまま心臓の負荷として跳ね返ってきます。通常でも頑張っている心臓にさらにダメージを与えかねないストレスをわざわざ提供していることになります。これでは健康のためにと始めたものが、自分自身を痛めつけているデメリット満載です。

回避する方法は一つしかありません。「しっかりと準備に時間をかけ、その負荷に耐えられる身体構造を再構築すること」です。

これには膨大な時間がかかります。競技にもよりますが、数カ月から1年近く構造変化にはかかると思ってください。ジョギングを初めて数週間でフルマラソンに参加するなど、自己満足度だけの行為でありカラダを自分でいじめているだけになります。

「2」の場合は、「何がいけないんだ」と思いますね。たくさん時間を費やして、たくさん練習を積み重ねているわけで問題ないように思われます。カラダも大きく変わり筋肉が適正化され、その競技に則した構造に変化してきます。

ピラティスやヨガのインストラクターの体つきが大変美麗なのは、そのパフォーマンスを発揮するにはその体が必要だから当然の結果といえるわけです。このアスリート級の運動量が一見健康に近づいているように見えるのにもかかわらず、危険であるというのは昨今の調査研究で判明しました。

これは全く運動を行わない人と、1週間に時速12km/hにて、30〜40km程度のジョギングをしている人と同じ寿命だそうです。この原因は特定されていませんが、運動はしなくてもいけないが、やりすぎても害があるということだと結論づけています。

 

健康な心臓を維持する

一番よい運動量は1週間2〜3時間程度の運動量を確保することが健康を維持できる条件のようです。しかも時速12km/hといった速い運動ではなく、ゆっくりとじっくり体全身に負荷をかけ、心拍数の過剰な増加を狙わないような様式が心臓の健康を保ちつつ、身体改革の一歩となるようです。

自分の体は自分でしっかりと管理していきましょう。

<ライター>

田中一秀


高校生から生物に興味を持ち、「将来は海洋生物学者になる!」と決めていたものの、知らぬ間に生物が医学に変わり、理学療法士を目指すこととなる。

在学中はスポーツ・リハビリテーションに傾倒し、筑波大学体育専門学群の様々な授業に参加し、スポーツリハビリテーションの基礎を学ぶ。その後、幼児の発育・発達に興味を持ち、卒業後は肢体不自由児施設、身体障害者擁護施設、高齢者施設などを並行して関わり、ヒトの奥深さを体験する。

学位では放送大学で学士を取得後、修士課程(保健医療学)、博士課程(心身健康科学)に進み、運動学習を中心テーマに研究を続ける。

解剖学、生理学、運動学、教育学、組織論などを中心に研究範囲を広げ、それらを基盤に介護施設を運営している。高齢者・障害者に対して適切な運動指導を行い、結果を出すことを目的に日々奮闘中。

現在のモットーは「心身相関(ココロが変わればカラダも、体が変わればココロも)」。

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