多文化社会オーストラリアの地で気付いた「他の誰でもない自分だけの健康」ヨガ/ボディワーク 通訳・イタクラアヤさんに聞く(前編)

ヨガが盛んなオーストラリア。そこでヨガインストラクターであり、レメディアル・マッサージをしているイタクラさんが、このたび帰国された。高校時代に、足の怪我でヨガに出会い、日本から海外へ羽ばたいた今もなお、ヨガの可能性、あるがままの自分を探求し続けている。そんなイタクラさんのシドニーでの生活・オーストラリア文化をテーマに話を聞いた。

自分と他人の心地よいところが違っていいんだと認められるように

―最初にイタクラさんご自身とヨガの出会いについて教えてください。

一番はじめにヨガと出会ったのは18歳の頃でした。

高校の部活動で、ボート競技をやっていたのですが、トレーニングをし過ぎて、足を怪我してしまいました。立ったり歩いたりするのも辛い、筋膜炎になってしまったんです。

でも大会が近かったので、どうにか体を動かして体力を維持したいと思った時に、鍼治療をやりつつ、ストレッチの真似事として、地域の運動施設に入っていたヨガ教室に行ってみたのがきっかけです。

若かったこともあり、足の調子が回復して、忙しくなった頃には、一旦ヨガから離れてしまったんですが、大学在学中に、1年間アメリカ交換留学をしていた時に、クラブ活動のひとつにヨガがあることを知りました。ヨガは以前にやったことがあって馴染みがあるし、授業以外の活動もしたくて、再びヨガを始めました。

当時は、言葉が自由に通じない不自由さ、勉強のストレスを抱えていたんですが、ヨガを通して人間関係が作りやすく、交友関係が広がりましたね。帰国後の大学四年生の時にRYT200の資格を取りました。でも実は、ヨガよりもピラティスの指導を先に始めたんです。2006年、フィットネスクラブでアルバイトをしていた時、日本初上陸の「グラビティ・ピラティス」という研修に参加させていただきました。ピラティスのリフォーマーを傾斜できて、ピラティスも筋トレも行えるマシンプログラムなんですが、強度を大きく変化させられるので、一般の方からアスリートまで幅広く対応でき、とても面白かったです。この研修で、アメリカから来日していたトレーナーの話し方や表情を臨場感たっぷりに通訳してくれる、フィットネス通訳という職に初めて出会ったんです。正確な日本語訳以上に、聞く側を惹きつける表現・伝え方に大きな衝撃を受けた研修でした。通訳の方を心からカッコイイと思った忘れられない研修となりました。

―「グラビティ・ピラティス」とは重力という意味ですよね。効果は感じられましたか?

はい。筋力強化という面においては、すぐに効果を感じていました。ただし、片足を上げる一つの動作でも、ピラティスで重要な、使うべきインナーを分離して動くという、本当のピラティスの効果を実感できたのは、半年後くらいのことでした。

―身体を動かすのがお好きなんですね。その中でもヨガにハマった理由とは?

進学校での勉強と100分の1秒を競うボート競技で、外側にある正解を求めたり、競争がベースの世界に暮らしていたからでしょうか。リハビリでヨガをし始めた時に、ヨガの先生から「自分にとって気持ち良いところまで伸ばしましょう」と言われたんですが、どう動いたらいいのか、自分は間違っていないかと必死に先生のポーズの見た目を真似ていました。何度かヨガに通った後、自分にとっての気持ちよさを感じはじめ、自分にとっての心地良いところと他人のそれが違っていいんだと気づき始めます。思春期にヨガに出会ったというのも、身体的回復だけでなく、いろんな面で心の開放につながったのではないかと思います。「自分が自分らしくあるため」のひとつの助けになったのでしょう。アメリカ留学中も、勉強のストレスがかかっている時に、自分が気持ちいいところに戻る、馴染みある感覚に戻る安心感から、ヨガにハマっていったように思います。

 

オーストラリアの人はスポーツを日常に楽しんでいる!そのコンディショニング法がヨガだった

―ヨガ通訳で世界中を回られて、ヨガの印象は変わりますか?各国や文化の特色等あれば教えてください。

土地によって違いますよ。日本は美容やダイエットを軸に、ホットヨガの広がりを強く感じます。オーストラリアはフィットネス・スポーツとしてのヨガが浸透しています。男性率も高いし、ランチタイムや早朝には、あちこちの公園で、ヨガやクロスフィットネス、筋トレを行う姿が見られます。オーストラリアは自転車・マラソン・トライアスロン・サーフィンとアウトドアスポーツがとても盛んで、プロから一般人まで、スポーツを気軽に、日常的に楽しんでいます。大会や日々の練習のコンディショニングに、ヨガを取り入れていますね。

―日本とオーストラリアを比べても、随分違いますね。この違いは、国民性の違いでしょうか?

一般のフィットネス人口が多いと思います。運動することが特別なことではないし、フィットネス=スポーツクラブに行くこと、ではないですね。シドニーでは、道を走るマラソンランナーも多いし、サイクリストがとても多いです。日本とは違い、自転車は車道を走ります。週末は自転車でフル装備した人がたくさん走っていたり、もともと運動する人がとても多いので、自分がやりたいスポーツのためのコンディショニングとして、会社に行く前やランチタイム、就業後にトレーニングをする人が多いんです。日本のように長時間残業をする文化はないので、家族が一番、自分の生活があってこその仕事という考え方が強いですね。

―オーストラリアの男性ヨガ人口はどれ位の割合ですか。

私のクラスでは、男性は3割位(30,40代~60代)です。女性が圧倒的に多い日本のヨガよりも、性別や年齢に関わらず、ヨガを生活に取り入れています。パートナーや子供と一緒に参加したり、家族でヨガスタジオに通っている男性も結構います。

続きは後編で。

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