先天性障害を乗り越え劇団四季入団。ピラティストレーナー清水美也子さんの身体と向き合い続けた半生(前編)


神戸を拠点に活動するピラティストレーナーの清水美也子さんは、ソプラノ歌手、ボイストレーナーとしての顔も持ち、音楽家がピラティスなどのメソッドを通じて自分の身体と向き合うことの有用性を訴えている。

彼女の主張の原点は自身の半生にある。右下肢形成不全という重度の障害を持って生まれつき、幼い頃から度重なる手術を迫られてきたこと。にも関わらず、ミュージカル女優になるという夢を持って努力し続け、25歳で劇団四季入団を果たしたこと。そうしたことの全てが、今の彼女を形づくっているようだ。

障害者として、そして音楽家として誰よりも自分の身体と向き合ってきた清水さんだから分かる、心身の健康と音楽の関係、そして見据える新たな夢とは--。

 

度重なる手術にも、決して卑屈になることはなかった

ヨガやピラティスを始める動機は人それぞれだが、自身の怪我や身体の不調がきっかけとなって、身体と向き合うようになったという人が多いように思う。

その意味では、清水さんは生まれついたその時から、その後の歩みが宿命づけられていたのかもしれない。先天性二分脊椎症による右下肢形成不全という重度の障害を持って生まれた清水さんの半生は、身体と向き合い続ける日々としてあった。

この障害は、脊椎の一部の奇形が原因で、右の骨盤から爪先までが正常に成長しないというものだ。左右の足の太さや長さの差は成長とともにどんどん広がるから、清水さんは人生の節目節目で大きな手術を強いられてきた。

「中学2年生の時に受けた手術は、イリザロフと呼ばれる当時日本では5例目という最新の術式でした。短かった右足の骨を切断して延長し、同時にねじれの矯正も行う難しいものになりました。入院中の1995年1月には阪神淡路大震災を被災し、2か月にわたり家族と離れ離れになる心細い思いもしました」

ところが、清水さんは10代半ばだった当時から、自分の身の上に対して卑屈になることがなかった。

「入院中も治療法について自分なりに色々と勉強していて。2か月ぶりに両親と再会した際には、専門的な用語を使って自分の症状について詳細に説明したことで、両親を驚かせたみたいです」

そのように強く育った背景には、足が悪いせいで何かができないと言い訳することを決して許さない、厳しい母親の教育があった。「幼稚園や学校で他の子供たちからからかわれることもあったものの、倍にして返して、逆に先生から叱られるくらいの子供だった」という。

 

ピラティスと出会い、点が線に。そして劇団四季入団

「母方が音楽一家だったこともあり、物心ついたころにはもう、宝塚歌劇団を見て育ちました」

2歳でリトミックに通い始め、幼稚園時代はピアノ、バレエ、水泳の英才教育。将来のミュージカル女優という夢は清水さんの胸の中で当たり前のように膨らみ、高校1年の時にミュージカル『美女と野獣』を見たことで、憧れの対象は宝塚から劇団四季へと変わった。

「生活の全てが夢の実現のためにあった」と清水さん。大学は音大の声楽科に進み、2回生からは劇団四季の元団員が座長を務める劇団に入団。他にジャズダンス、クラシックバレエのレッスンにも通い、残りの時間はアルバイトに明け暮れた。

大学4回生になる春に再び足の手術を受けることになるのだが、この手術もまた、夢のためにした決断だった。

「イリザロフという手術はその後の成長を見込んであらかじめ右足を長めに伸ばしておくものだったのですが、思ったほどに身長が伸びなかったために、今度は短縮の必要に迫られたんです。正確に言えば、生きていくことだけを考えれば必要のない手術でした。でも、劇団四季に入るためには、最低限3センチのヒールを履けるようにならなければならなかったんです」

清水さんが本格的にピラティスと出会うのは、この直後のことだ。当時歌の指導を受けていた先生からリハビリとしてやるよう勧められたことがきっかけだった。

ところが、続けていくうちにリハビリは単なるリハビリではなくなっていった。バレエのレッスンでそれまでできなかった動きができるようになり、歌のレッスンでは声が出しやすくなっていることに気が付いた。

高校時代にアレクサンダーテクニークを習っていた清水さんは、その時点ですでに、音楽家が身体の使い方を学ぶことの重要性を頭では理解していた。音大の授業で音声生理学や解剖学について学んでもいた。

だが、「確かな理論的背景を持ち、体系的で再現性の高いピラティスというメソッドと出会うことにより、そうした点と点が結びつき、一つの線になった。そのことが、その後の上達には大きかった」と清水さんは振り返る。

そうして25歳で臨んだ5回目の挑戦で、清水さんは合格率3%未満という狭き門をくぐり、ついに劇団四季入団を決めることになる。

続きは後編で。

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